アクって何?

鍋料理や煮込み料理を作るときに、スープに浮かぶ白い泡のようなもの。ほうれん草やたけのこなどに多く含まれているもの。
・・・今回はそんなアクについてのお話です。

アクは「取り除いた方がいいもの」ということは知っているかもしれませんが、その正体を知っていますか?

一般的にアクは、食品に含まれる苦味やえぐみを感じる原因となるものですが、その成分は動物性のものと植物性のものでは大きく異なります。


植物性のアクの成分は、シュウ酸などの有機酸やポリフェノール類、アルカロイド類などの化学物質です。どの化学物質がアクの成分であるかは植物によって異なります。例えば、ほうれん草はシュウ塩や硝酸塩、たけのこはシュウ酸やホモゲンチジン酸、ワラビはチアミナーゼごぼうはタンニンがアクの成分となっています。
この中で、シュウ酸と硝酸塩は、その摂取と健康との関係が話題にされることがあります。


☆シュウ酸
みなさんは、ほうれん草の表面に砂のような粒がたくさん付着しているのを見たことがありませんか?
それは多分シュウ酸を含む粒で、洗えば簡単に落ちます。

シュウ酸は一緒に食べた食品中のカルシウムと結合し、カルシウムの吸収を阻害するという報告があります。しかし、シュウ酸はゆでるとその多くはゆで汁に溶けだします。ほうれん草やたけのこはシュウ酸を多く含みますが、普通はゆでて食べるので(ゆでこぼすのが効果的)、シュウ酸のカルシウム吸収阻害作用によって健康への影響が出ることはないでしょう。
また、最近は生で食べられる「サラダほうれん草」というものが売られています。一概にはいえませんが、サラダほうれん草は品種改良などにより、シュウ酸といったアクの成分が低減されており、生で食べられるそうです。


☆硝酸塩
硝酸塩は、チーズやハム、ソーセージなどに食品添加物(調整剤、発色剤)として加えられることがあります。
農林水産省のHPによると、硝酸塩の摂取と発がんの関係を言われることがあり世界中で研究が行われていますが、その証拠はまだなく、国際機関のFAO/WHO合同食品添加物専門家会合も「関連があるという証拠にはならない」と言っているとのことです。

とはいえ、添加物としての硝酸塩は、他の添加物や農薬と同じように、科学的データからリスクを評価され、一生涯にわたって毎日食べ続けても健康に影響を及ぼさない一日摂取許容量(ADI)が算出され、それに基づいた使用基準が定められています(*)。
*:ADIの詳細についてはこちらの記事を見てください。農薬についての記事ですが、ADIの算出のしかたは添加物と同じです。

一方で、野菜に含まれる硝酸塩には、添加物のような基準値はありません。平成12年の厚生労働省調査報告書によると、日本人の硝酸塩の摂取源の96%以上は野菜(生の状態)や果物などの生鮮食品で、添加物はごくわずかでした。
ただし、シュウ酸と同様、硝酸塩もゆでることによってその多くが除去できますし、普通の量を食べている限りはシュウ酸による健康への影響はないとされています。
シュウ酸を嫌がって野菜を食べないことによるビタミンや食物繊維などの不足の方が健康上の影響は大きそうです。



次回は効果的なアク抜き法をご紹介します。
(あと、動物性のアクの正体も・・)