全国消団連「食中毒を起こさないためにくらしの中で注意したいこと」

6月7日、全国消費者団体連絡会による学習会「食中毒を起こさないためにくらしの中で注意したいこと」が開催されました。

最近、食中毒に関するニュースを頻繁に見聞きします。改めて食中毒の怖さを感じている方は多いのではないでしょうか?
今年に限ったことではなく、毎年、食中毒は気温や湿度が高くなるこの時期に多く発生しています。もちろん飲食店だけでなく、家庭における原因で発生する食中毒も少なくありません。
今回の学習会では社団法人日本食品衛生協会の高谷幸氏、中村紀子氏、岡本愛氏により、食中毒の種類や家庭でできる予防法についてのお話がありました。この機会にぜひ、食中毒に関する情報を整理し、食中毒にかからないためのポイントを覚えておきましょう。


☆食中毒を起こさないためにくらしの中で注意したいこと((社)日本食品衛生協会事業部、高谷幸氏、中村紀子氏、岡本愛氏)

平成22年度の食中毒の発生件数は1,254件、患者数は25,972人でした。発生件数のうち、飲食店が半数を占めましたが、家庭も12%あり、意外と多いことが分かります。
こうした統計は保健所に届け出があったデータをもとにしているので、実際の数はもっと多いと思われます。

食中毒の症状はお腹が痛くなるだけでなく、様々なものがあります(下痢、おう吐、発熱、頭痛など)。
一番怖いのは、下痢やおう吐などによる脱水症状です。食中毒かなと思ったら、水分補給をしっかりとして、薬を飲まずに医師の検査を受けるようにしてください。

食中毒は、細菌性のもの(サルモネラブドウ球菌など)、ウイルス性のもの(ノロウイルスなど)、化学性のもの(フグ毒、毒キノコ、ヒスタミンなど)、寄生虫や原虫によるものがあります。
寄生虫や原虫は目に見えますが、細菌やウイルスなどの微生物はとても小さく、肉眼でも小学校にあるような顕微鏡でも見ることができません。
また、微生物は、食品の色やにおいを変えずに増殖し、食品の鮮度とも関係がないので、見た目でその食品が大丈夫かどうかを判断することができません。これが食中毒の一番やっかいなところです。

微生物の増殖は、温度、水分、栄養などによって影響を受けます。今年は節電が呼び掛けられていますが、冷蔵庫は絶対に10℃以下を保つようにしましょう。ただし、鶏肉や魚介類など4℃以下が望ましい食品もあります。牛肉は六日以内に食べるけど鶏肉はもっと早いうちに食べるなど、留意するといいでしょう。

食中毒の原因となるおもな物質は、家庭ではサルモネラ黄色ブドウ球菌腸炎ビブリオ腸管出血性大腸菌セレウス菌など、飲食店ではこれらに加えてカンピロバクター、ウエルシュ菌、ノロウイルスなどです。


食中毒を予防するためには、「つけない」「やっつける」「増やさない」が三原則となります。
「つけない」ためには、食材ごと、調理作業ごとに手を洗う、まな板や包丁もその都度よく洗うことが大切です。忘れがちなまな板の側面や裏側、包丁の柄の部分もよく洗うようにしましょう。また、生で食べる野菜を先に下ごしらえし、その後で肉や魚の調理に取りかかるという工夫をするとよいでしょう。
「やっつける」ためには、基本的には加熱調理がもっとも大切です。具体的には、カレーやスープはよくかき混ぜながら沸騰するくらいまで加熱する、ハンバーグなどは中までしっかり火を通す、一日の終わりにまな板や包丁などを熱湯消毒して乾かすといった工夫が挙げられます。
「増やさない」ためには、食品を10℃以下(あるいは65℃以上)で保存することが大切です。お弁当を作る際には、おかずはしっかり加熱し冷ましてから詰めるようにしましょう。
また、あらゆる食品について、菌(病原性のあるなしに関わらず)が付着していることを前提として考え、よく洗浄することが大切です。特に生で食べる野菜は加熱殺菌ができないので注意が必要です。


それぞれの微生物の特徴と対策は以下の通りです。

サルモネラ
主な原因食品は卵や肉などです。細菌性では最も患者数の多い食中毒です。
サルモネラは十分に加熱することで死滅します。
鶏は糞や尿が排泄されるのと同じ部分から卵を出すので、卵殻に排泄物中のサルモネラが付着することがあります。そのため、現在では卵は出荷前によく洗浄しています。ただ、親の鶏の卵巣が感染している場合は、卵内部にサルモネラが含まれることがあります(三千〜一万個に一個くらいの割合)。微量のサルモネラであれば体内に入っても大丈夫なのですが、菌量が多ければ食中毒につながります。半熟の卵焼きなどにしてお弁当に入れておいたら菌量が爆発的に増えることがあるので注意が必要です。

黄色ブドウ球菌
主な原因食品はおにぎりやサンドイッチなど、調理したあとに加熱しないものです。
黄色ブドウ球菌は手指の傷やくしゃみなどを通して食品を汚染し、増殖した後、毒素を出します。
黄色ブドウ球菌による食中毒の予防法は調理前の手洗いです。お弁当作りをする前はよく手洗いをし、手指に傷や手荒れがある場合は、食材に直接触れないようにラップなどを使って調理するようにしましょう。また、黄色ブドウ球菌は髪の毛や顔にもよく存在するので、顔周りを触るクセのある人は要注意です。
では、他の食中毒と同じように、加熱調理は効果的なのでしょうか?いいえ、黄色ブドウ球菌自体は熱に弱いのですが、それが排出する毒素は熱に強いのです。傷のある手で作ったおにぎりを後でほぐしてチャーハンにするというのも避けた方がいいでしょう。

腸炎ビブリオ
主な原因食品は魚介類で、特に夏場に近海で獲れるアジやサバ、タコ、イカ、赤貝などです。
コレラ菌の仲間である腸炎ビブリオは好塩性であり、真水に弱いという特徴があります。なので、家庭で刺身などを作るときは、ウロコやエラの部分などを水道水でよく洗うと腸炎ビブリオによる食中毒を予防できます。魚をさばいた後のまな板や包丁には腸炎ビブリオが付着していることがあるので、別の食品に使う前によく洗うようにしましょう。
また、刺身を冷蔵庫で保存する際は、ほかの食品を汚染させないように、野菜やツマなどとは別の皿に盛っておくようにしましょう。

腸管出血性大腸菌カンピロバクター
主な原因食品は肉で、腸管出血性大腸菌は生野菜や井戸水なども原因となります。
この二つの菌は熱に弱いので、しっかり加熱すれば食中毒を予防することができます。ブロック肉の中心に菌はいないので中がレアの状態でも大丈夫なのですが、挽き肉を使った料理(ハンバーグなど)は必ず中心まで火を通すようにしてください。
また、ほかの食品を汚染させないように、肉を切った後のまな板や包丁はよく洗うようにしましょう。同じ理由により、焼き肉をする場合は、菜箸やトングを加熱前(生肉を取る用)と加熱後(取り分け用)で使い分けるようにしましょう。

セレウス菌
主な原因食品はチャーハンなどの穀類調理品です。
米や小麦などの農作物を原料とする食品に多く見られる菌で、加熱後冷める過程で毒素を排出するという特徴があります。
セレウス菌は加熱しても死滅させるのは難しく、食中毒の予防法としては、チャーハンや焼きそばなどを大量に作り置きしないということが挙げられます。

●ウエルシュ菌
主な原因食品は大量に作り置きしたカレーやスープなどです。
セレウス菌と同様に、熱に強く、加熱後冷める過程で毒素を排出します。ウエルシュ菌は肉や魚介類などのたんぱく質と空気の少ない環境を好むので、カレーなどを入れた深い鍋の底で急激に増殖しやすくなります。
カレーを作り置きしたい場合は、加熱調理後すぐに冷却・低温保存し、室温保存は避けるようにしましょう。また、鍋に作り置きしたカレーを食べる場合は、空気を送り込むようによくかき混ぜながら、沸騰するまで十分に加熱するようにしましょう。

ノロウイルス
主な原因食品は二枚貝です。
飲食物やヒトを介して流行し、感染性が高いウイルスです。ノロウイルスは温度が低くても増殖するので、このウイルスによる食中毒は冬に多くなります。
ノロウイルスによる食中毒の予防法は、二枚貝をよく加熱することです。
ノロウイルスは乾燥に強いので、おう吐物に混じったウイルスが空気中に舞い上がり、鼻から入って感染することもあります。そのため、飲食店にはノロウイルスを考慮したおう吐物を処理する専用キットが置かれていることもあり、とても気が使われています。


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最後に日本食品衛生協会の方から、食中毒予防早見表をいただきました。
今回挙げられたような食中毒の原因となる微生物の特徴と予防法を一覧にしたポスターです。



早速会社の冷蔵庫に貼りました。ありがとうございました!
ポスターと同様の情報は日本食品衛生協会のサイトで公開されていますので、ご覧ください。