Q&A「缶詰は容器から微量の金属物質の溶出があると聞いたが、心配すべきか?」

先日いただいたご質問です。


☆缶詰は容器から微量の金属物質の溶出があると聞いたが、心配すべきか?

缶詰の容器にはいくつかの種類があります。
缶ジュースや野菜缶、カニ缶などにはアルミ缶やスチール缶、フルーツ缶や一部の野菜缶にはスチールにスズメッキを施した無塗装缶が主流です。

フルーツ缶でスズメッキを施している理由は、スズによって果物の色や香りの変化、ビタミンCの分解が防げるというメリットがあるからです。
しかし、スズを過剰に摂取すると毒性が出てきてしまい、吐き気やおう吐、下痢などが症状として現れます。今回のご質問が意図している缶詰は、フルーツ缶など無塗装缶のことだと思います。



フルーツ缶はデザートに便利ですね


2008年、国際的な評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)はスズの評価書を作成しました。
一般的な人がスズを体内に入れる主な経路は食事です。この評価書によると、JECFAが7ヶ国(オーストラリア、フランス、日本、オランダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカ)の人々のデータを分析したところ、一人あたりのスズ摂取量の平均値は1〜15mg/日でした。日常的に無塗装缶の食品を食べる人の場合は最大で50〜60mg/日でした。

では、この摂取量は健康に影響を及ぼす量なのでしょうか?
評価書でレビューされているスズの急性影響に関する研究2件のうち、1件では最小毒性量(毒性試験において有害影響が見られた最小の量)が約66mgであり、より適切と考えられるもう1件では67mgの摂取でも影響は見られませんでした。これらの値は日常的に無塗装缶の食品を食べる人のスズ摂取量と同程度です。
このことから、一般的には急性影響が生じるような量のスズを缶詰から摂取することはあまりないと思われます。体内に入ったスズの90%以上は排泄されるので、蓄積するということもありません。

ただし、ひとつ覚えておきたい注意点があります。それは、一度開封した無塗装缶の食品は缶に入れたまま置いておかないということです。
なぜなら、開封するとスズの溶出が早くなるからです。開封した無塗装缶のまま保存した食品を一日に4回食べた場合、スズ摂取量は約200mg/日にもなるそうです。先に書いた7ヶ国の一人あたりのスズ摂取量の平均値(1〜15mg/日)と比べると、段違いに大きい数値であることが分かります。

フルーツ缶の表示を見てみると、「使い残しはガラスなどの容器に移して冷蔵庫に入れ、お早めにお召し上がりください」という注意書きがあります。



この点には注意を払うべきですが、開封前で賞味期限内(大体2,3年間)の缶詰であれば、スズの溶出による健康影響を心配する必要はないでしょう。

フルーツ缶をおいしく保つというメリットがあるスズでも、状況によってはデメリットが出てくることもある。やはり表示をしっかりチェックするということは大切ですね。