消えたサイト

今回は、元食品業界紙記者の方から寄せていただいた記事を以下にご紹介します。


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農林水産省のホームページの「遺伝子組換え技術の情報サイト」が見直し中になっている。また、同省が作成した遺伝子組換え作物のリーフレットの配布が中止、回収されている。
直接の引き金となったのは、日本消費者連盟から提出された抗議文である。「一方的に遺伝子組換え技術のメリットだけを強調し」ているそうだ。

幸い厚生労働省「遺伝子組換え食品Q&A」は健在だ。


遺伝子組換え技術については賛否両論、様々な意見があり、表示や生産の規制が行われている。
しかし、情報を遮断するのは暴挙としかいえない。明らかに間違った情報だったとしたら、改変なり訂正を行えばいいと思う。もし、今回のことが本当に単なる見直しであれば、リニューアルして復活すると信じる。


遺伝子組換え技術は、これからの食料問題を考えれば、有用であると同時に欠かせない技術である。ただ、環境への影響や消費者の未知への不安感情などが慎重に進めることにつながり、現在は多くのコンセンサスを経た上で、開発について議論されている。
今回の問題の一つ目は、このようにして長年にわたって培われた議論の上に積み上げた情報を「見えなくした」ことである。

二つ目の問題点は、なぜ農林水産省関連のホームページだけがこうした格好になったのかだ。
一部のブログでは既に指摘されていることだが、何か政治的な思惑があったらしい。しかし、大切なことは日本の国としての考えである。
科学技術の振興では文部科学省があり、安全性の確認では厚生労働省がある。生産面では農林水産省が、消費では消費者庁が存在している。
各省庁にはそれぞれの立場と主張があるのだろう。だが、各省庁が、別々の意思を持って、考え方を披歴するなら、日本の国としての考えはどこにあるのかと問われる。問うのは国民であり、諸外国である。


あまり好きではない言葉に、閣内不一致というものがある。人間だから、一つひとつの発言が必ずしも一致し、全く矛盾がないということはないだろう。むしろ、どこを切っても同じ絵が出る金太郎飴のような内閣は、気持ちが悪いし、閣僚は意思がないのかと思われる。
それでも、遺伝子組換えの問題に対して、政府の方針を定め、勉強を十分にし、議論が一致を迎えたあかつきには、遺伝子組換えに対する考え方を日本国の意思として打ち出してほしい。

小手先の情報壟断は許されることではない。再三だが充実したサイトとして復活することを望んでやまない。

(tange)