こちらのブログについて

初めまして。株式会社生活環境研究所です。

こちらのブログでは、おもに食の安全や食品表示の見方、食に関する豆知識などをご紹介しています。できるだけ分かりやすい言葉でつづるように心がけていますので、どうぞお気軽にご覧ください。

また、関連セミナーの傍聴記録も随時掲載しています。こちらは少々専門的な内容ですが、食関連のお仕事をされている方や関心の強い方とぜひ共有したいものばかりです。ご参考にしていただければ幸いです。

なお、弊社のメインブログは【 http://blog.skk-inc.co.jp/ 】です。掲載している記事は同じですが、最新の記事はメインブログのみとなっている場合もあります。

それでは、引き続きお付き合いくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします!

厚生労働省、薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 乳肉水産食品部会(12月20日・生食用牛レバーの取扱いについて)

12月20日厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が開催され、生食用牛レバーの取扱いについて審議されました。

今回は、参考人である岩手大学教授の品川邦汎氏から、牛レバー内部における腸管出血性大腸菌の汚染実態調査に関する発表がありました。
また、食肉に関する業界団体からは二名の参考人が出席し、意見陳述をしました。


次のようなポイントがありました。
●今回行なった汚染実態調査の速報値によると、牛肝臓内部の173検体中3検体で腸管出血性大腸菌が検出された。その内2検体がO157だった。また、腸管出血性大腸菌の遺伝子は牛肝臓内部の157検体中10検体で検出された。
●肝臓内部でO157が検出された牛は、健康な牛だった。
●業界団体としては、一方的な規制強化でなく、どのようにして安全に食べられるのかを検討していって欲しい。
●次回1月の審議会で規制の方向性を示す予定。

配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
今回、牛レバー内を173検体調査したところ、O157が2検体で検出されました。O157腸管出血性大腸菌のひとつで、感染力が強く、それによる食中毒は重篤な場合では死に至ります。
これまでもO157は家畜の糞便中に含まれることがあり、処理加工中に肉やレバーの表面などを汚染することは知られていました。ですが、レバーの内部でO157が確認されたのは今回の調査が初めてだそうです。
O157は食品の中心温度が75度以上で1分以上の加熱で死滅するため、肉やレバーはよく焼くことで食中毒の心配は少なくなります。しかし、ユッケやレバ刺しは当然のことながら、食べる部分を直接加熱するということはしていません。これだけリスクの高いものを、「加熱」という効果的な食中毒対策なしで体に取り入れていた・・今回ニュースなどで見聞きして初めて知ったという人も多いかもしれません。
ユッケやレバ刺しなどに対して、規制を強化することで食中毒のリスクはある程度小さくなるのでしょうが、人間にも個体差はあります。体が弱っている人や、高齢者、子どもが食べるときはよく焼いてから!常識的なことかもしれませんが、生食文化のある日本人としては、習慣として身につけたいことです。


***


●傍聴記録
厚生労働省事務局からの説明】

厚生労働省事務局から、資料1「生食用牛レバーの取扱いについて」の説明がありました。

<これまでの経緯>
・平成10年、生食用食肉の衛生基準を設定。
・平成11年、生食用レバーから腸管出血性大腸菌が検出されたことを受け、関係業者や消費者に周知徹底。
・平成17年、牛レバー内部のカンピロバクター汚染に関する知見が得られたことを受け、抵抗力が弱い人は生肉を食べないよう周知徹底。
・平成18年、飲食店で起きた腸管出血性大腸菌による食中毒を受け、牛レバーを生食用として提供することはなるべく控えるよう飲食店に周知徹底。
・本年7月、牛レバーを生食用として提供しないよう関係事業者に指導を徹底。

<生食用牛レバーによる食中毒>
・食中毒統計によると、平成11-22年の牛レバーによる食中毒は116件(内、腸管出血性大腸菌は20件)。なお、同時期で生食用牛肉による食中毒は5件(内、腸管出血性大腸菌は1件)。


【品川邦汎参考人からの発表】
品川邦汎参考人から、資料2「牛レバー内部における腸管出血性大腸菌等の汚染実態調査(概要)」の発表がありました。

<調査概要>
・本年8-11月、全国16か所の食肉衛生検査所で調査を行なった。
・糞便、肝臓、胆汁について、腸管出血性大腸菌の分離培養と遺伝子検査を行なった。肝臓表面については拭き取り、内部については左葉を中心に採取した。左葉を対象としたのは、カンピロバクターが比較的検出しやすい部分であるため。

<調査結果(速報値)>
腸管出血性大腸菌は分離培養によって、糞便では173検体中20検体(内O157は11検体)、胆汁では186検体中0検体、肝臓表面では193検体中13検体(内O157は5検体)、肝臓内部では173検体中3検体(内O157は2検体)が検出された。
・遺伝子検査によっては、糞便では155検体中64検体、胆汁では168検体中1検体、肝臓表面では178検体中35検体、肝臓内部では157検体中10検体が検出された。

<胆汁における腸管出血性大腸菌の増殖性>
・牛6頭分の胆汁(菌未発達)を用いて、腸管出血性大腸菌がどのように増殖するのか調べた。
・6頭分の胆汁を混合したプール胆汁に3種類の菌液(菌液A:O157VT1&2、菌液B:O157VT2、菌液C:O26VT1)を接種し、一晩培養した。また、胆汁ごとに菌液Aを接種し、一晩培養した。
・プール胆汁では、いずれの菌液の場合でも培養後の菌量は100万個以上であった。(スタート時菌量は、菌液A:1ml当たり190個、菌液B:230個、菌液C:150個)
・胆汁ごとで菌の増殖のしかたに差はなかった。

<文献調査>
・国内の食肉処理場での腸管出血性大腸菌の汚染実態については、次の5文献があった。
(1)胆汁548検体を用いて、菌株分離率は0%、遺伝子検出率は0.4%(2001年9月-2005年3月)
(2)胆汁119検体を用いて、菌株分離率は0%、遺伝子検出率は0.8%(2005年4月-2006年3月)
(3)肝臓中心部102検体を用いて、菌株分離率は3.9%、遺伝子検出率は4.9%(2005年5月-2006年1月)
(4)胆汁318検体を用いて、菌株分離率は0.3%(2004年6月-2007年1月)
(5)肝臓中心部165検体を用いて、菌株分離率は4.2%(2005年5月-2007年1月)
・国内の流通品の腸管出血性大腸菌の汚染実態については、次の9文献があった。
(1)肝臓(生食用)10検体を用いて、菌株分離率は10%(1994年6月7月9月)
(2)肝臓(生食用)24検体を用いて、菌株分離率は0%(1998年8-12月)
(3)肝臓(生食用)16検体を用いて、菌株分離率は0%(1998年度)
(4)肝臓(生食用)50検体を用いて、菌株分離率は0%(1999年9月-2000年1月)
(5)肝臓(生食用)10検体を用いて、菌株分離率は0%(1999年度)
(6)肝臓24検体を用いて、菌株分離率は8.3%(2000-2004年)
(7)肝臓15検体を用いて、菌株分離率は0%(2007年9-11月)
(8)肝臓15検体を用いて、菌株分離率は0%(2008年9月-2009年1月)
(9)肝臓36検体を用いて、菌株分離率は0%、遺伝子検出率は13.9%(2010年7-11月)
アメリカの食肉処理場2か所での調査(2005年5-7月)によると、直腸便(933検体)でO157が陽性だったのは7.1%、胆のう粘膜スワブ(933検体)では0.1%、胆のう粘膜組織(933検体)では0.4%だった。
・牛にO157を飲ませて感染させ、9日後・15日後・36日後の感染牛の糞便、第一胃、胆汁におけるO157の検査をした文献によると、9日後は8頭すべての部分において陽性だった。15日後は7頭の内、糞便は5頭、第一胃は4頭、胆汁は0頭で陽性だった。36日後は8頭の内、糞便は7頭、第一胃は2頭、胆汁は5頭で陽性だった。腸管内のO157が必ずしもすぐに胆汁中で増えるというわけではない。また、場合によっては腸管内(糞便)からは検出されなくても胆汁中から検出されるということもある。

<質疑応答(一部抜粋)>
・(野田衛委員)牛の個体のサンプリングはどのようにして行なったか?
→(品川参考人)検査に使ったのはほとんどが健康な牛だった。過去にO157を検出した農場のものを選んだが、分からないときは無作為に抽出した。
・(野田氏)胆汁よりも肝臓の検出率の方が高かったという結果だった。胆汁を検査することで肝臓全体の安全性を担保することはできないということか?
→(品川参考人)胆汁中からは検出しづらく、それは難しいと思う。
・(阿南久委員)肝臓表面から内部に菌が移行するということはあるか?
→(品川参考人腸管にいた菌が胆のうに行って胆汁中で増える場合もあるし、それが胆管を通って肝臓に行くこともある。
・(小西良子委員)O157は肝臓の三つの葉に均等にあるのか?
→(品川参考人カンピロバクターは少し差があるけど、O157は大体均等。
・(寺嶋淳委員)肝臓内部でO157が検出された牛はどういう状態だったか?
→(品川参考人一般に流通するような健康な牛だった。農場によって検出の頻度に差はある。
・(野田氏)調査結果で、分離培養で菌が検出されなくても遺伝子が検出される場合があったのはなぜか?
→(品川参考人)肝臓中では死んだ遺伝子も含まれているかもしれない。
→(甲斐明美委員)菌を分離することは難しい。100コロニーくらい調べなければ検出されない。必ずしも遺伝子が死んでいるということではなく、分離が難しかった、ということだと思う。


【業界団体からの意見陳述】
全国食肉事業協同組合連合会の小林喜一参考人と日本畜産副産物協会の野田富雄参考人から意見陳述がありました。

<小林喜一参考人の発表>
・この部会で検討する前に「レバー内にO157が存在するため厚生労働省が生食禁止の可能性」とのマスコミ報道があり、部会の検討の方向性を左右しかねない環境をつくることは遺憾に思う。
・食文化を否定する方向ではなく、いかにしたら生食が可能であるかの方向で検討して欲しい。
・牛レバーにO157が検出された場合、レバーの組織の中にまで浸潤しているのかどうかを確認したい。
・組織の中にまでO157が浸潤しているなら、レバーの外部から病変や機能低下が分かるかどうかを確認したい。
・レバーの処理加工工程は衛生的に行なっている。案内をするので委員にも現場を見てもらいたい。

<野田富雄参考人の発表>
・ユッケの食中毒事件以来、東京と大阪の市場においていずれもレバーの販売数量、価格ともに半減し、売れ残ったものは廃棄処分をしている。
・なぜ今規制強化を行う必要があるのか。根強い消費者の要望も多くあり、問答無用の一方的な規制強化には反対する。
・業界では、工場の認定基準制定や、ガイドライン制定、衛生的な内蔵処理機械の開発など、長年に渡って改善努力をしてきた。
・来年には、大学に委託して、効果的な処理手法の検討などをすることを考えている。

<質疑応答(一部抜粋)>
・(阿南氏)マスコミがどう報道しようと、この部会は事実に基づいて審議しているので、そのような言い方をされるのは心外だ。ユッケの集団食中毒事件の際に事業者を調査したら、基準に従っていたのは半分だけだった。業界ではこれまでどのように取り組んできたか?
→(小林参考人)事実としてマスコミ報道が先にあったことをおかしいと述べた。生の肉にはリスクがあるので、小売で生食は奨励できないとしている。協会ではお肉屋さんに対する講習会はやっているが、その先は難しいのでぜひ厚生労働省でやってもらいたい。
・(小西良子委員)レバーを全てPCRなどで検査をして、それにパスしたもののみ流通させるということは可能か?
→(小林参考人)それが容易ならばそうしたいが、難しいのでは。組織の中にまで入り込んでいる場合は洗浄などで除去することはできないので、フグ調理師のような制度が必要だと思う。
→(山本茂樹部会長)生食用牛肉の場合は、検査は25gの25検体が必要だった。レバー全てを検査してそれにパスしたもののみ流通、というのは難しいと思う。
→(野田参考人もうひとつの方法として、SPF豚のように川上で管理するということがある。農場によってO157の検出され具合に差があるということだったので、時間はかかるが、その方が良いと思う。
→(品川参考人)今回はと畜場に入ってきた牛を使って検査した。どのような生産がされ、どのようなと畜がされたのかは分からない。食べるものにこういうリスクがある、というデータを示しただけだ。食の安全は生産から消費者までの一貫した管理が必要だと思う。
・(山本部会長)次回の審議会で規制の方向性を示す。

本の紹介「こんな『健康食品』はいらない!」

今回は久しぶりに本のご紹介をします。

「こんな『健康食品』はいらない!」です。


こんな「健康食品」はいらない! (だいわ文庫)

こんな「健康食品」はいらない! (だいわ文庫)


消費生活アドバイザーの若村育子さんが書かれました(2010年、大和書房、定価700円+税)。


皆さんは健康食品と聞いてどのようなものを思い浮かべますか?

ビタミンのサプリメントを思い浮かべる方もいれば、栄養をたっぷり含んでいそうなジュースを思い浮かべる方もいるでしょう。

実は、健康食品と言ってもその法律上の定義や規制はなく、薬とは異なり、有効性や安全性などの科学的な審査はされていません(トクホを除く)。


こちらの本では、世間で有名な健康食品やトクホ、健康に良いと言われている食品の数々(約50種類)について、商品名を挙げながら、各4ページで実態を解説しています。


例えば「青汁」。今は色々なメーカーが出しているそうです。
青汁を持っている方はパッケージの原材料表示を一度見てみてください。原材料表示は使われている原料を重量が多い順に記載するというルールがありますので、最初に記載されているもの=原材料のうち一番多く使われているものとなります。
お持ちの青汁の原材料表示は何が最初に記載されていますか?
青汁というとケールや大麦若葉を絞ったもの、というイメージがありますが、製品によってはそうした緑葉野菜よりも甘味料や食物繊維(難消化性デキストリン)の方が先に記載されていることがあるそうです。
青汁を飲んでお通じがよくなったという方がいたら、緑葉野菜よりも食物繊維の効果の方が大きいのかもしれないのです。


本の題名を見るととても強い印象を持ちますが、実際に読んでみると決してそういう部分だけではありません。
合理的な健康食品の選択の仕方の紹介や、健康につながるような食生活の提案が随所でされています。
とにかく内容がぎっしり詰まっていますので、健康食品に手を出しがちな方などは手元に置いておいて損はない一冊だと思います。

厚生労働省、薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会・放射性物質対策部会(11月24日)

11月24日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会・会放射性物質対策部会が開催されました。
前回に引き続き、食品中の放射性物質について、新たな規制値を設定するための審議が行われました。

今回の審議で委員から了承を得たことは次の通りです。
●五つの年齢区分(1歳未満、1-6歳、7-12歳、13-18歳、19歳以上)に分けて評価する。
●年齢区分のうち、「13-18歳」「19歳以上」については、摂取量に男女差が大きいため、男女別に評価する。
●規制値は放射性セシウムについて設定する。その他の核種については放射性セシウムとの線量の比を推定し、放射性セシウムに対する規制を行うことで一括して管理できるようにする。
●新たな規制値では「一般食品」「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」の食品区分に分けて管理を行う(現在の暫定規制値では「飲料水」「牛乳・乳製品」「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」になっている)。

配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
今回、新たな規制値のイメージがはっきりとしてきました。食品を四つの区分に分けて規制値を設定するとのことです。その区分の中には、これまでになかった「乳児用食品」があります。現在の暫定規制値は乳児について考慮していないというわけではなく、もっとも感受性の高い層に合わせて設定してあります。ただ、このように明確な区分を作ることで、より安心が得やすくなりそうです。
新たな規制値は暫定規制値よりも厳しく設定されることになると思います。このことで、実際の食品売り場にはどのような変化があるのでしょうか?
これまで様々な食品でモニタリングデータが集められており、最近は乾燥させた食品や一部地域のものを除くと暫定規制値を大きく下回るものがほとんどとなってきました。こうした現状からすると、新たな規制値が設定されることで、流通できなくなる食品というのはそんなに多くないのではと思います。(もちろん新たな規制値の厳しさのレベルによっても違うのですが。)


***


●傍聴記録
【資料1の説明】

厚生労働省事務局から、資料1「規制値を計算する際に考慮する年齢区分等について」の説明がありました。

食品安全委員会のリスク評価書においては、小児は成人よりも放射線による健康影響を受けやすい可能性があるとされている。
・現在の暫定規制値には年齢区分はないが、評価の際には「乳児」「幼児」「成人」という年齢区分ごとに限度値を算出し、もっとも厳しい限度値を全年齢に対して採用している。
・新たな規制値においても同じような方法で限度値の算定を行う。それに加えて、より細やかな年齢区分への配慮を行う。

・新たな規制値では、「1歳未満」「1-6歳」「7-12歳」「13-18歳」「19歳以上」という五つの年齢区分に分けて評価を行う。また、「13-18歳」「19歳以上」については摂取量に男女差が大きいため、男女別に評価を行う。


【資料2の説明】
作業グループの高橋知之委員から、資料2「規制値設定対象核種について」の説明がありました。

放射性セシウムとそれ以外の核種の管理方針>
・規制の対象とする核種は、半減期が一年以上のものとする。
放射性セシウムについて規制値を設定する。
・それ以外の核種については放射性セシウムとの線量の比を推定し、放射性セシウムに対する規制を行うことで一括して管理できるようにする。

・以上の方針に基づいて管理する上で必要な、内部被ばく線量に占める放射性セシウムの線量の寄与率について検討を行った。

放射性セシウムの寄与率の評価>
・まず、モニタリングデータなどから、土壌と淡水における放射性セシウムの寄与率を推定した。
・海水については、海水に流出した核種の量や組成は明らかではなく、海水中での核種の挙動も複雑であるため、土壌や淡水のようにモニタリングによる評価を行うことは難しいと考えた。現在、海産物の実測値を得る作業が進められているが時間がかかっている。従って、海産物については感度解析(*)を実施し安全側の評価を行うことにする。
*感度解析とは、データの不確実性や変動性がアウトプット(放射性セシウムの寄与率)の値にどのような影響をもたらすかを把握する手法。

・次に、環境(土壌、淡水)からの放射性核種の食品への移行係数を国内データと国際原子力機関の報告に基づいて設定した。
・そして、農作物、畜産物、淡水産物における放射性セシウムの寄与率を年齢区分ごとに算出した。
放射性セシウムの寄与率が最も小さいのは、20-50年後の1歳未満の農産物における約74%という値であった。そのため、海産物については、さらに安全側に立って、放射性セシウムの寄与率を50%として評価することにした。

放射性セシウムの寄与率や年間食品摂取量、放射性セシウムの線量係数などの値を用いて、食品摂取による内部被ばく線量における放射性セシウムの寄与率の推計値の経年変化を求めた。
・その結果、経過年数1年後の放射性セシウムの寄与率(1歳未満86%、1-6歳86%、7-12歳84%、13-18歳84%、19歳以上88%)を適用し、規制値を誘導することが妥当であると考えられた。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(角美奈子委員)海産物については二回分のモニタリングデータしかないが、それ以外には調査されていないのか?
→(高橋委員)現在は二回分しか公表されていない。
→(角委員)こちらからの「こういうモニタリングデータが欲しい」という要望は文部科学省に伝わっているのか?
→(事務局)必要なものがあれば働きかけをする。
→(山口一郎委員)モニタリングデータでは足りないときは推計データを用いる。だが、実際の状況に近いのは前者なので、今後新たなモニタリングデータが出たときにそれを用いて妥当性を検証するという考え方がいいのでは。
●(田上恵子委員)大人は男女別で評価を行うとあったが、資料2には男女別のデータがない。
→(山口委員)男女別については、摂取量の違いに関するデータはあるが、線量係数に関する違いを考慮する意味がどれだけあるだろうか。
→(山本茂貴部会長)基本的には摂取量の違いを考慮するが、もし線量係数についても示す必要があるなら出してもいいと思う。


【資料3の説明】
厚生労働省事務局から、資料3「食品区分(案)について」の説明がありました。

・現在の暫定規制値は、食品を「飲料水」「牛乳・乳製品」「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」の五つの区分に分けて設定している。
・新たな規制値は、「一般食品」「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」の四つの食品区分に分けて設定する。この区分のメリットは、個人の食習慣の違いの影響を最小限にできる(ex. コメではなくパンばかり食べる人もいる)、分かりやすい規制になる(ex. イチゴは野菜と果物のどちら?)、コーデックス委員会などの国際的な考え方と整合する、ということである。
・「乳児用食品」(粉ミルクなど)と「牛乳」の区分は、食品安全委員会のリスク評価結果(「小児の期間については、感受性が成人より高い可能性」)を考慮して設定したものである。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(高橋委員)乳児用食品という区分を作るのはいいと思うが、一般食品は乳児には食べさせられないというメッセージになってしまわないようにしなければ。一般食品の規制値も最も感受性の高い層を基準にして設定しているということをきちんと伝えていくべきだ。
→(浅見真理委員)乳児用食品とは何かを明確に伝えないと、そのような誤ったメッセージになってしまうかもしれない。乳児用食品は、粉ミルクなど乳児が摂取する比率が高いものを指している。

植物と私たちの栄養源、ナッツ!

皆さんは、「ナッツ」と聞くと何を思い浮かべますか?

日本ではピーナッツやアーモンドを食べることが多いでしょうか。
英語でnutは、硬い殻に覆われた食べられる種子のことを指し、ドングリやヘーゼルナッツ、ブナの実、クリ、クルミ、ピスタチオなどがあります。



アーモンドとマカダミアナッツ


一般的に種子には発芽と初期の成長に必要な栄養が蓄えられています。
ナッツにも脂質が多く含まれるため、前史時代には重要な栄養源とされていました。
油脂類を別にすると、なんと、食品の中でもっとも重量あたりのカロリーが高いのです!確かにナッツは小さなお皿に乗る分くらいしかつままなくても、お腹いっぱいになりますよね。
その他にも、ナッツにはビタミンや食物繊維、ミネラルなどが豊富に含まれています。また、皮にはポリフェノールが含まれているので、ヘーゼルナッツなど皮が薄いナッツならそのまま食べるといいかもしれません。


現代ではナッツは栄養源というより、それが有する独特の風味が好まれ、多種多様に楽しまれています。おつまみとしてつまんだり、ケーキやクッキーに入れたり、チョコレートをかけたり、料理のソースやトッピングに使ったり・・。
ナッツの独特な風味は、甘さや脂っぽさ、香ばしさなど一連の香りが混じり合ってできるものです。料理やお菓子にほんの少しトッピングするだけで、大きなアクセントになります。



キャラメルヌガーはアーモンドとチョコレートの組み合わせ


このように、おいしくて栄養価も高いナッツですが、人によっては気をつけて欲しいことがあります。それはアレルギーです。
食物アレルギーの原因食品には色々ありますが、ナッツはそのひとつです。ナッツにアレルギーのある人は少なくなく、しばしば重篤な症状をまねきます。さらに、微量で発症することがあり、工場でナッツを使用していた機器で製造した別の食品を口にしただけでアレルギー症状が出た例があります。

日本でもピーナッツを加工食品に使った場合は、どんなに微量でもその旨を記載することになっています(ピーナッツの他に「落花生」と記載されることもあります)。これはアレルギー対策のためなのです。

Q&A「日本の大豆自給率は低いのに、『国産大豆使用』とうたった商品が多いように感じる。これらの産地はほぼ北海道か?」

先日いただいたご質問です。


☆日本の大豆自給率は低いのに、「国産大豆使用」とうたった商品が多いように感じる。これらの産地はほぼ北海道か?

確かに、豆腐や納豆などの大豆製品のパッケージに「国産大豆使用」と書いてあるものをよく見かけますね。



農林水産省の統計(*)によると、平成21年度の全国の大豆収穫量は229,900トンでした。
都道府県別の1位は北海道で48,500トン、総収穫量の約2割を占めています。2位以下は、佐賀県が21,000トン、宮城県が18,100トン、福岡県が14,900トン、秋田県が12,800トンと続きます。
大豆生産は北海道が多いイメージがあるかもしれませんが、九州や東北でも結構生産されているんですね。
*統計データはこちらをご覧ください。


一方で、平成21年度の大豆の自給率(種子用や飼料用を含む)はおよそ6%で、食用としての自給率はおよそ22%でした。日本で使われる大豆の多くが輸入ものということになります。


それでもなぜこんなに「国産大豆使用」の商品が多いように感じるのか?

それは、国産大豆は「国産大豆使用」とうたう商品に使われているから。そして、そうした商品は大豆の利用用途としてはごく一部だから、ということが考えられます。

ご存じの通り、大豆は豆腐や納豆、味噌、醤油などに利用されますがそれだけではありません。
実際は製油に使う量の方が圧倒的に多いのです。平成21年度は、国内で利用する大豆のうち、純食料(豆腐、油揚げ、納豆、凍り豆腐、豆乳、煮豆、惣菜など)に用いる大豆は約2割程度であったのに対して、製油用は約7割でした。

大豆から作られる大豆油は、なたね油などと調合してサラダ油として使われる他、様々な加工食品に使われます。
普通は加工食品に使った油の原料の産地をわざわざ記載することはないので、私たちの目には輸入ものの大豆の利用用途が見えにくくなっているのでしょう。

厚生労働省、薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会・放射性物質対策部会 合同会議(10月31日、BSEについて)

10月31日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会・会放射性物質対策部会の合同会議が開催されました。議題は、食品の放射性物質の規制値とBSEの再評価についてです。
今回はBSEに関する部分の傍聴記録をご紹介します(*)。
放射性物質に関する部分の傍聴記録はこちらをご覧ください。


主なポイントは、
●1992年にイギリスを中心にBSE感染牛が確認された。感染が広がった原因は、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を飼料として用いていたためと考えられる。
●日本は現在、BSE対策として飼料規制を行うほか、と畜場で全ての牛の特定危険部位を除去している。
●21か月齢以上の牛についてはBSEに感染していないかの検査をしている。20か月齢以下は検査する必要がないが、全ての自治体が自主的な検査を続けている。
●飼料規制を行った結果、国内では2003年以降に出生したものでBSE感染牛は確認されていない。世界でもBSE発生件数は年々少なくなっている。
●2005年に、食品安全委員会によるBSEのリスク評価が行われた。
●2009年に日本は国際獣疫事務局(OIE)におけるBSEステータスが「管理されたリスクの国」となった。アメリカやカナダ、フランスなど32か国がこれに分類されている。
●2007年に、アメリカとカナダ側から輸入条件見直し協議の要請が来た。要請の内容は、国際基準に則した貿易条件への早期移行である。今後の安全対策を捉えなおすために食品安全委員会に再評価をお願いする。

配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
2005年に行われた食品安全委員会BSEのリスク評価から6年。輸入条件見直し協議の要請などを背景に、現状のBSEのリスクを捉え直すため、食品安全委員会へ再評価を依頼することになりました。
日本で牛肉の安全性を保つために行われているBSE対策は、飼料規制と特定危険部位(病原体がある場合、その99%が蓄積する部分)の除去が中心となっています。
全頭検査は安全性のための対策として必要なものではありません。それでも、全ての自治体は自主的に全頭検査を続けています。その理由の一つに「自分のところだけ止められないから」ということがあるかもしれません。毎年かかる不必要で多額なコストは、自治体の財政を圧迫するという大きな問題を生んでいるのではないでしょうか。今回の再評価が、適切な措置に踏み出す契機になればと思います。


***


●傍聴記録
【事務局からの説明】

厚生労働省事務局から、牛海綿状脳症BSE)対策に関する経緯および現状について説明がありました。
BSEとは>
BSEは牛と水牛に感受性があり、感染した場合は3-7年程度の潜伏期間の後、死に至る。治療法はない。
・1992年にイギリスを中心にBSE感染牛が確認された。感染が広がった原因は、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を飼料として用いていたためと考えられる。
・ヒトへ感染した場合は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJD)が発症する。vCJD患者数は、2011年1月までで世界中で222人いる。


<国内で行われているBSE対策>
日本は現在、BSE対策として飼料規制を行うほか、と畜場で全ての牛の特定危険部位SRM)を除去している。SRMの除去は、ヒトがvCJDに感染するリスクを下げるために重要である。
21か月齢以上の牛についてはBSEに感染していないかの検査をしている。20か月齢以下は検査する必要がないが、全ての自治体が自主的な検査を続けている。
一般的にBSEは61か月齢などの高月齢で発症する。これまで国内で確認された中で最も低いのは21か月齢である。
・日本ではこれまで36頭のBSE感染牛が確認されている。飼料規制を行った結果、発生件数は少なくなり、2003年以降に出生したものでBSE感染牛はいない。
・2005年に、食品安全委員会によるBSEのリスク評価が行われた。
・2009年に日本は国際獣疫事務局(OIE)におけるBSEステータスが「管理されたリスクの国」となった。アメリカやカナダ、フランスなど32か国がこれに分類されている。


アメリカとカナダからの輸入条件見直しの経緯>
BSEの発生により、1996年にイギリス産牛肉とその加工品の輸入を中止した。その後、EU諸国、BSE発生国産の輸入も中止した。2003年にはカナダとアメリカからの輸入を中止した。
2005年の食品安全委員会のリスク評価の結果を受けて、アメリカとカナダからの牛肉の輸入を再開した。輸入の条件は、その牛肉が20か月齢以下の牛由来である証明があること、特定危険部位が除去されていることである。
2007年のOIE総会で、アメリカとカナダのBSEステータスが「管理されたリスクの国」に認定された。これを受けて、アメリカとカナダ側から輸入条件見直し協議の要請が来た。要請の内容は、国際基準に則した貿易条件への早期移行である。
・世界的にもBSE発生件数は少なくなっている。1992年は37,316頭であったが、2010年は45頭、2011年(9月30日現在)は12頭である。
・今後の安全対策を捉えなおすために、食品安全委員会に再評価をお願いする。


<各国で特定危険部位の範囲が異なる>
・OIEのBSEステータスが「管理されたリスクの国」である場合の貿易条件の一つに特定危険部位の除去がある。OIEの基準では、特定危険部位の範囲は、30か月齢以上の頭部・せき髄・せき柱、全月齢の扁桃・回腸遠位部としている。
特定危険部位の範囲は各国で異なっている。アメリカとカナダはOIEの基準と同じである(ただし、カナダでは、扁桃は30か月齢以上に対して定めている)。EUでは、30か月齢以上のせき髄、12か月齢以上の頭部・せき髄、全月齢の扁桃・腸としている。
・それに対して日本では、全月齢の全ての部位を特定危険部位としている。


【議論&質疑応答(一部抜粋)】
●(栗山真理子委員)日本ではヒトへの感染例はあるか?今後の予測はあるか?
→(事務局)イギリスでは、1999年の29人、2000年の25人がピークだった。2004年は9人、2009年は3人、2010年は0人だった。
日本ではイギリス滞在歴のある人が一人発症している。今後の予測も含めて食品安全委員会に諮問するが、流通している牛肉のリスクを検討するので、基本的には現状のリスクを審議してもらう。
●(阿南久委員)OIEの基準をどのように日本の基準に採用するかが今後の課題となる。一部のマスコミでは、アメリカの輸入条件を緩和するためだという報道が見受けられるが、そうではないと思う。今でも国内では全自治体が全頭検査をやっており、そうした措置をどうするのかというのが問題だ。科学的知見でもって措置がとられていくようにするためには、コンセンサス作りを重視する必要がある。
●(事務局)今後、今回の諮問の内容を食品安全委員会と調整する。また、対策全般の再評価ということで、輸入の関係国との調整も進めていきたい。