第二回食品表示一元化検討会(消費者庁)

10月25日、消費者庁の第二回食品表示一元化検討会が行われました。

本検討会は様々な立場にある16名の委員から構成されています。手島玲子委員と堀江雅子委員以外の14名が出席しました。

今回は消費者庁事務局から、食品表示の目的・機能と、分かりやすい食品表示のあり方について説明があり、議論が行われました。
配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
今回は、事務局から、新たな表示制度で目指す目的と機能についての提案、そして、分かりやすい表示についての提案がありました。
傍聴した率直な感想は、議論があちこちにいって、理解しにくかったということ。現状の課題や、検討会で何をどのように議論すべきかといった大枠が示されないまま、強引に進めているような印象を持ちました。
前回の検討会では多くの委員から「分かりやすい表示」というキーワードが出ましたが、分かりやすい表示とは何か?一元化することで本当に分かりやすくなるのか?三つに分かれている法令が一つになるのであれば、確かに事業者にとっては表示を作りやすくなるだろうけど、消費者にとってはどのような違いがあるのか?多くの疑問が残りました。
皆さんは表示のどのような点が分かりにくいと感じているでしょうか。
私自身は、分かりにくいというか、誤解を生んでいそうなことに、原産地表示のルールがあると感じています。例えば、輸入食品の原産国・・原産国と言われるとその原料が生産された場所だと思うかもしれませんが、主な加工をした場所になります。また、「糖類ゼロ」は全く糖質が入っていないということではなく、糖質の中でも、単糖類や二糖類が、食品100g当たり0.5g未満であればOKということも知らない人が多いのではと思います。
消費者目線というならば、こういう誤解を生んでいるものを是正することも大切なのではないでしょうか。


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食品表示の目的・機能>
消費者庁事務局による資料の説明】
食品表示に係る主な法令は、JAS法、食品衛生法健康増進法である。
JAS法は、食品の品質の向上や生産の合理化、取引の公正化などを目的としている。
食品衛生法は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止することを目的としている。
健康増進法は、国民の栄養の改善や健康増進を目的としている。
●現行の食品表示の機能と役割には、次のようなものがあると考えられる。
‐安全に食べられるかどうかを合理的に判断するための情報を伝達する(消費期限、アレルギーなど)
‐商品選択のための情報を伝達する(原産地、原材料、添加物、内容量など)
‐公正で自由な競争を促進する(原産地、原材料など)
‐適切な栄養摂取を促すための情報を提供する(栄養表示など)
●新たな表示制度の目的と機能には、次のようなものがあると考えられる。
(目的)
‐より多くの消費者の合理的な商品選択に資する
‐食品の安全性に関する情報が容易に認識できる
‐適切な栄養摂取など、国民の健康増進を図る
(機能)
‐合理的な商品選択のための情報を分かりやすく提供する
‐消費者の安全に係る情報を明確かつ平易に伝達する
‐適切な栄養摂取を促すための情報を提供する
‐公正で自由な競争を促進する

【議論&質疑応答(一部抜粋)】
●(山根香織委員)この検討会の目標は、現行の表示制度を見直し、より良いものを作ることだと思うが、それが資料からは見えてこない。新たな表示制度で想定している目的を果たすためにはどのような議論が必要か。
●(市川まりこ委員)従来は「安全のための」や「商品選択のための」と、法令ごとに目的が明確であるが、一元化することでそうした考え方をどのようにまとめるかの議論が必要だ。また、消費者目線というが、一部の消費者を優先させないで欲しい。消費者意識というものは、事業者によって意図的に導かれているという面もある。
●(鬼武一夫委員)資料を論理的な構成にしないと、様々な意見が出てきてしまい、議論がまとまらない。ある程度、中間報告を見据えたような形で資料を用意するべきだ。
●(中村幹雄委員)資料には、公正取引委員会のことも盛り込んで欲しい。民でやれるところは民でやればいい。法令で規制する必要のないこともあるので。
●(中川丈久委員)機能として挙げた「適切な栄養摂取を促すための情報を提供する」と「公正で自由な競争を促進する」は消費者庁の仕事ではないのでは。どこまでを仕事の範囲とするのかを決めなくてはならない。イメージとしては法令を一つにするということか?
→(事務局)三法令から表示に関する部分を抜き出して一つの新たな法令を作る。新たな法令ができたら、JAS法、食品衛生法健康増進法の、食品表示に係る部分は廃止される。
→(山根委員)酒についても盛り込んで欲しい。
→(森田満樹委員)三法令についてまずは議論をして、後で酒や公正取引についても議論をするという進め方にするか。
→(事務局)議論すべきことは色々あると思うが、まずは消費者庁が所管しているところを進める。そういう意味では公正取引は食品表示課ではないが、消費者庁が担当している。ただ、議論の切り口はあくまでも食品なので、景品表示法は後になる。
●(中川委員)次回の資料には、消費者庁が目指す目的を明記して欲しい。私としては、「合理的な商品選択に資する」ということかと思う。もしそれであれば、次の段階として「合理的とは何か?」という議論ができる。
→(迫和子委員)合理的というのは一つのキーワードになる。商品選択の幅は時代によって変わるので、それも捉えなおす必要がある。
→(池戸重信座長)次回整理した資料を用意し、再度提案する。


<分かりやすい食品表示のあり方>
消費者庁事務局による資料の説明】
●過去の消費者意識調査から、食品表示を分かりにくくしている要因として次のことが挙げられる。
・表示に用いる用語の定義が法律によって異なる
・情報が多すぎ、商品選択に必要な情報が見つけにくい
・文字が小さい
・消費者になじみのない中間食品や添加物が記載されており、実際に役立つ情報になっていない
・原材料名についているカッコ書きに複数の意味がある
●表示を分かりやすくするためには、次のようなことが考えられる。
・表示用語の定義を統一、整理する
・表示事項に優先順位をつけることで、容器包装に表示する文字数を調整する
・表示の文字のサイズを大きくする
・ウェブやPOPなど、容器包装以外で情報を提供する
・表やマークなど、視覚的要素を活用する
●消費者意識調査では、食品を選ぶ際に重要と考えている項目として、期限表示、原産地、添加物、原材料名が特に多かった。

【議論&質疑応答(一部抜粋)】
●(鬼武委員)消費者意識調査から、いくつかの表示を分かりにくくしている要因を挙げているが、誤解がある。例えば、「表示に用いる用語の定義が統一されていない」というのはどうだろうか。これは消費者ではなく、事業者にとって分かりにくい要因ではないか。
→(仲谷正員委員)消費者庁の検討会なので、消費者にとって分かりにくい要因について議論する。消費者が知りたい情報をもっと洞察していく必要がある。例えば、「原産地の表示が重要」ということでも、特定の地域のものを避けたいのか、それとも特定の地域のものを購入したいのか。
●(市川委員)分かりにくくしている要因には、表示されている目的や重要度が分かりにくいということなどがあると思う。ぱっと見て、表示事項の目的と用途が分かるようにしてはどうか。
●(中村委員)事業者が工夫したら済む問題であれば今回の議論からは外すという必要もある。まずは義務表示をしっかりと議論しなければならない。分かりにくさは事業者の努力で改善できる部分もある。
●(池戸座長)次回の検討会で出して欲しい資料はあるか?
→(中村委員)普通の消費者に対して行った調査結果があれば出して欲しい。今回のものは、モニターというアクティブな消費者が対象の調査結果なので。
→(丸山善弘委員)皮肉を言うつもりはないが、分かりやすい表示制度を目指すのであれば、資料も分かりやすく議論に使えるようなものを用意して欲しい。
→(田崎達明委員)中間報告のたたき台が必要だと思う。
→(鬼武委員)今後の法案提出までの大まかなタイムフレームを出して欲しい。


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次回の検討会は11月28日、個別課題の検討を行う予定です。