食の信頼向上をめざす会「トクホとはなにか?−エコナ問題をきっかけに−」1

12月14日、食の信頼向上をめざす会によるメディアとの情報交換会が開催されました。

今回のテーマは「トクホとはなにか?」ということで、エコナ問題(*)を切り口に、トクホや海外の健康食品、情報発信の仕方などについての講演がありました。

(*:「体に脂肪が付きにくい」食用油としてトクホをとった花王株式会社のエコナに、精製過程で生じる発がん性物質になる可能性のあるグリシドール脂肪酸エステルが普通の油の約10倍含んでいることが分かり、今年の10月に花王自らがトクホの失効届けを出した。)

3時間に及ぶセミナーでは様々な情報が提供されましたが、今回は「一般の人に誤解されやすい」こととして会場で話題にのぼったことを数回に分けて書きたいと思います。


☆「食の安全は守られている」と「食品にゼロリスクはない」は矛盾している?

食の信頼向上をめざす会会長の唐木英明氏は、ある講演で「食の安全は守られている」そして「食品にゼロリスクはない(絶対に安全ということはない)」という話をされたところ、「矛盾しているじゃないか」と指摘をされたそうです。

「初めにきちんと説明しなかったのがいけなかった」と断りを入れた後、唐木氏は次のように説明しました。

『遺伝子組換えや農薬など新しい技術で開発されたものは、非常に厳しい規制を行っているので、「食の安全は守られている」と言います。一方で、普通の食品には元々毒性のある物質が含まれているし、食中毒が起こるかもしれないので、「ゼロリスクはあり得ない」とも言えるのです。』

毒性のある物質というとあまりピンとこないかもしれませんが、例えば、ジャガイモのソラニンやトウガラシのカプサイシン、コーヒーのカフェインなどがあり、私たちは毎日の食生活で普通に摂取しています。これらについては、長い食経験によって安全性が担保されていると言えます。

一方で、新しい技術で開発された食品については、事業者に対して安全性に関する詳細な科学的データを求め、専門家で構成された食品安全委員会の調査会でその安全性を審議されます。
一度で申請が通ることはなく、数回の追加データの提出と審議を重ねた末、販売許可がおります(もちろん却下されることもあります)。そのため、こうした食品は、普通の食品よりもむしろリスクが科学的に明らかで、安全は守られていると言えるのです。


☆安全と安心は違う

科学ライターの松永和紀氏は、多くの人は安全と安心という二つの言葉の意味の違いを理解していないので、花王ニュースリリースは分かりにくかったのではないかと話しました。

「安全・安心」と一括りにして使われていることがよくありますが、食品の安全性を話題にする場合は分けて使います。

食品の安全とは、食品にはリスクがあることを前提として、そのリスクを科学的根拠に基づいて評価し、健康への悪影響の可能性を最小限に抑えた状態をいいます。

一方で、こうしたことにより安全性が担保されている食品でも、消費者は安心できないということがあります。
例えば、ある食品について、「安全だ」と事業者や政府が述べても「危険だ」という雑誌の記事を見かけた場合、消費者の多くはその食品に対して安心できないのではないでしょうか。

安全とは科学的な根拠、安心とは心理的な背景によるものなのです。

花王は第1報で、エコナの安全性は覆されることはないが、消費者の安心のために販売を自粛するという旨の文章を出しました。

松永氏は初めてこの文章を読んだ時は違和感がなかったけれど、一般の人と話したときに、安全と安心の違いを分かっていることを前提として論じることは、かえって混乱をまねくことに気づいたと話しました。


傍聴記録?に続きます。