健康食品フォーラム「食の安全性と消費者庁発足」(1)

2月5日、(財)医療経済研究・社会保険福祉協会による第19回健康食品フォーラムが開催されました。

テーマは、「食の安全性と消費者庁発足」ということで、消費者・産・官・学の立場におられる四名から、健康食品の現状や課題に関する講演がありました。

【講演者】
消費者:全国消費者団体連絡会事務局長、阿南久氏
産:(財)日本健康・栄養食品協会理事長、林裕造氏
官:消費者庁食品表示課長、相本浩志氏
学:人間総合科学大学大学院教授、小林修平氏

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昨年9月に発足された消費者庁は、それまで厚生労働省農林水産省が担当していた食品表示に関する業務を一元的に担っています。
健康食品に関しては、消費者庁は「健康食品の表示に関する検討会」を設置しており、特定保健用食品(トクホ)を含めた健康食品の在り方や表示の在り方などについて、現在も議論が進められています。

あらゆる食品には何らかのリスクがありますが、こうしたリスクを科学的に評価することをリスク評価といい、内閣府に設置されている食品安全委員会が担当しています。
そして、このリスク評価の結果に基づいてルールを制定することをリスク管理といいますが、食品表示のルールについては消費者庁が担当しています。
また、そのリスクについて、消費者や事業者、行政、有識者が情報共有をし、よりよいシステムを目指すことをリスクコミュニケーションといいます。
以上の、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションを合わせてリスク分析といいます。

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今回は傍聴記録の前編として、阿南氏と林氏の講演をまとめたものをご紹介します。
なお、本フォーラムの内容には次の記事が関係していますので、補足としてご覧ください。
食の信頼向上をめざす会「トクホとは何か?―エコナ問題をきっかけに―」?
(独)国立健康・栄養研究所「栄養・食生活と『健康食品』」?
(独)国立健康・栄養研究所「栄養・食生活と『健康食品』」?


☆消費者から見た食品機能表示の課題(阿南氏)
【勉強会を開催】
昨年のエコナ問題に関して、全国消費者団体連絡会(以下、消団連)は、花王株式会社と消費者庁からの情報提供の場である「トクホとエコナ学習会」(*)を二回開催しました。
*:消団連のホームページ(第一回目第二回目)に学習会の開催報告が掲載されている。

この学習会は良いリスクコミュニケーションの場になったと感じており、食品安全委員会の評価が進んだら三回目を開催したいと思います。


消費者庁の意義】
最近は自分の健康に不安を感じている人は増えていても、知識やスキルがなくどうしたらよいのか分からないという人が多いようです。

消費者の意見が政策に反映され、より消費者の立場にたったリスク管理がなされることが、消費者庁がリスク分析に関わる意義だと思います。

また、消費者の健康維持・増進に対する願いは強く、食生活の基本の知識やスキルを伝えるという消費者教育は、今後消費者庁の大きな仕事になってくると思います。
健康食品のことでいえば、基本的な食生活ができていなければ健康食品を食べるだけでは健康にはならないということも消費者は分かっていないのです。


【消団連からの提案】
健康食品に対して不信感を持っている消費者は多く、トクホについてもよく理解していません。そこで次の提案をいたします。

・トクホに限らず、健康食品全てを網羅するようなルールをつくり、安全性と有効性が実証されたものだけが流通できるようにする。
・健康食品は有効性については大きく書いているのに、食べ方や摂取量に関する記述は読みにくく分かりにくい。誤認がなく、かつ分かりやすい共通のルールを作る。
・安全性と有効性について、定期的に最新の科学的知見に基づいたチェックをするルールを作る。

私たち消費者団体としては、「トクホとエコナ学習会」のような場をつくり、リスクコミュニケーションを推進していきたいと思います。その中で、行政や事業者などと協力し、食生活の基本の知識やスキルといった国民の消費者力を向上させていきたいと思います。


☆消費者の理解と納得に向けた安全性情報(林氏)
健康食品の存在そのものが議論されることがありますが、そういった議論はもう済んだことで、今は役に立つ健康食品が備えるべき条件について議論されるべきだと思います。

【健康強調表示の制限】
健康食品は医薬品ではなく食品に区分されます。

医薬品は薬事法により定義されたものです。その定義のひとつである「人または動物の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって、機械器具でないもの(医薬部外品および化粧品を除く)」という文言により、健康食品に許される健康強調表示(食品あるいはその成分と健康の関係を述べ、示唆すること)は制限されています。

国際動向をみて、表示の在り方を再考すべきだと思います。例えば、コーデックス委員会で提案されている健康強調表示の導入や、国際的によく用いられている機能性素材の受け入れなどについてです。


【安全性を認証する仕組み】
健康食品の安全性については、科学的根拠に基づいて安全性の認証が行われる仕組みである、「第三者認証」が最も消費者の理解を得やすい方法だと思います。

三者認証とは、フローチャートに従って事業者が製品の安全性を自主点検し、その過程や結果の妥当性を中立的な第三者組織が認証するという仕組みです。
平成17年度に厚労省は食品の安全性の自主点検をする際のチェックポイントを示しました。第三者認証はこれを受けたもので、(財)日本健康・栄養食品が準備を進めており、今年4月から運用を開始する予定です。


【消費者に納得される情報提供とは】
現在、健康食品とともに提供される情報は、消費者が求めている内容と大きく異なると言われています。
また、情報の受け取り方には個人差があります。例えば、科学的厳密性よりも分かりやすく感覚に訴えかけるようなものを好む人たちもいれば、科学的根拠を強く求める人たちもいるといったことです。

消費者に納得される情報提供の仕方は、次の三つが柱となります。
・表示:製品の種類や特性、使用条件などについての分かりやすい情報
・表示の科学的根拠についての詳細な情報:表示には記載されないが、消費者への提供が望ましいと判断される情報を目につきやすくするなどの工夫
・科学技術情報の妥当性を保証するための情報:トクホマーク、JHFAマーク、GMP認定マーク、第三者認証マークなど

また、これらの基盤には、メーカーの信頼性についての情報があります。

消費者に納得されるには、スペースが限られた表示だけではなく、以上のような製品に関する情報をセットにして提供することが現実的だと思います。