有機野菜と無農薬野菜のちがい

野菜についてよく耳にする「有機栽培」とは、どんなものだか知っていますか?
有機栽培と無農薬栽培は同じようなものだと思っている人は多いかもしれませんが、実は違うものです。

有機栽培は、化学的に作られた肥料や農薬を使用せず、「土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させ」て生産したものです。
カギカッコで書いた前提があるため、土壌を使わない水耕栽培有機に含まれません(ということは、最近盛り上がっている植物工場で生産された野菜に有機のものはないということになりますね)。なお、土壌を使用しないきのこについては有機栽培の表示が認められています。

有機野菜として認定されたものには、農林水産省「有機農産物の日本農林規格」に基づき、次のような有機JASマークが付けられます。



図. マークの下には認定機関名が入る


有機野菜には、使用できる肥料や農薬(*1)、栽培できる農場の条件(*2)などが定められており、生産および流通過程が第三者認定機関により審査され、これに通過したもののみを「有機」や「オーガニック」ということができるのです。
*1:化学合成のものはダメだが、天然物質や化学的処理を行っていない天然物質に由来するものは使用できる
*2:お茶や果樹のような多年生作物の場合は収穫までの三年以上前から化学合成肥料および農薬を使用していないこととする(一年生作物については、最初の種まきまでの二年以上前から)


実際にはこのほかにも、細かく設定された項目を審査されることになります。例えば、周辺からの肥料や農薬の飛沫がないか、肥料は当該ほ場で生産された作物の残さを用いる、遺伝子組換え技術を用いて生産された肥料は使用しない・・などがあります。


このような厳しい制度であることもあり、日本で流通する有機栽培の野菜はごくわずかです。平成21年5月現在で有機栽培が認定された農家は国内で3,925戸でした。平成17年の農林業センサスで明らかになった日本の総農家数、約285万戸の0.13%程度です。
*3:農水省が農林業推進のための基礎資料とするために5年に一度行う調査


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一方で、無農薬野菜は比較的多く見かけると思います。
無農薬野菜は農薬を使用していない野菜・・と捉えられますが、有機野菜で定められているように、化学肥料の禁止やほ場の制限などはありません。

平成14年の総務省の調査により、「無農薬」は「有機」よりも優れたものであるという誤認をしている消費者が約6割もいるという実態が明らかになりました。
そのため、農水省は平成19年に「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を作成し、「無農薬」などの表示は禁止することとしました。
現在は、農薬を使用せずに栽培した作物については「特別栽培農産物」と呼び、「農薬:栽培期間中不使用」などと表示することになっています。(無農薬という言葉は、有機とは違い正式な分類ではないのですね・・)
しかし、これはあくまでガイドラインであり、これに反したからといって罰則などがあるわけではありません。


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有機栽培か特別栽培農産物か普通の農産物か・・
残留農薬が体に影響を及ぼすことはないということは、以前も書きました。
「安全な食べ物だから」という理由で有機栽培や特別栽培農産物を選んでいるとしたら、普通の農産物も安全であるということを忘れないでください。


また、栄養価について次のような発表があります。
2009年のイギリス食品基準庁(FSA)の研究レビューによると、有機の食品と普通の食品では栄養価に差はなく、有機のものを食べたからといって健康になるわけではないということでした。さらにこのレビューには、「消費者が有機の食品を選ぶ理由には動物福祉や環境への関心など様々なものがある」の記載もあります。

皆さんはどういった理由でどの食品を選びますか?