残留農薬の監視はだれがやっている?

以前残留農薬の基準値の設定のしかたについて書きました。

基準値を超えたからといって、ただちに健康に影響が出るなんてことはあり得ないのですが、現在の日本では基準値超えをした農産物は回収や廃棄が当たり前となっています。回収や廃棄はコンプライアンスの問題上行っていることだと思いますが、健康に影響がない場合は、食品ロスなどまた別の問題も気になるところです。


さて、今回は、残留農薬の基準値をちゃんと守っているか?を監視する業務についてまとめたいと思います。

日本では、残留農薬の基準値の設定はまず、食品安全委員会が農薬の健康への影響を科学的に評価するところから始まります。次に、厚生労働省が、この評価に基づいて基準値を設定します。
日本では、基準値が設定されていない農薬以外は使用できなく(*)、基準値を超えて残留している作物については原則販売できません。
*個別の基準値がないものも多く、そうした農薬については健康に影響が出ない濃度である0.01ppmが一律基準として適用されます。


こうした制度とともに、食品衛生法に基づき、厚労省は流通している作物について残留農薬の検査を行うことになっています。
実際には、国産品については全国の保健所が抜き取り検査を行っています。
輸入品については、港や空港についた作物はまず植物検疫を受けた後、食品衛生監視員により書類上の審査を受けます。ここで、さらに検査の必要があるとされたものについて、表示の確認や残留農薬化学分析などが行われることになります。これで「不合格」となったものは廃棄されるか輸出国に送り返されます。また、流通した後も、国産品と同様に保健所による抜き取り検査が行われています。


厚労省が作成した平成16年度農産物中の残留農薬検査結果によると、当該年度に検査した総検体は約244万件(国産品は約4万件、輸入品は約204万件)でした。
農薬が検出されたのは4,895件(0.2%)で、このうち国産品は1,260件(0.32%)、輸入品は3,635件(0.18%)でした。ということで、農薬が検出されたもの自体かなり少ないのですが、もちろんこれらが全て基準値を超えたというわけではありません。
基準値を超える量の農薬が検出されたのは65件(0.01%)で、このうち国産品は14件(0.01%)、輸入品は51件(0.01%)でした。
これらはいずれも極めて低い値であり、前年度と同様の傾向であったため、「我が国で流通している農産物における農薬の残留レベルは低いものと考えられる」と結論づけられています。
また、ニュースの影響などで「残留農薬は輸入品の方が多いだろう」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、この調査結果からは決してそういうことは言えないでしょう。



以上が、残留農薬の監視業務(モニタリング)についてです。

ほかに、農林水産省では毎年度、残留農薬の基準値が実際に機能しているかどうかを調べるために、農家での農薬の使用状況の調査を行うと同時に、残留農薬の検査を行っています。
厚労省の監視業務と違う点は、厚労省は無作為にサンプリングした作物を検査しているのに対して、農水省は農家から収集した(無作為ではない)作物を検査しているところです。また、目的が違うため、検体数も大きく異なります。監視を目的とした厚労省の検査の方が圧倒的に多くの検体を検査しています。

平成20年度調査結果によると、4,729戸の農家に農薬の使用状況を調査したところ、4,717戸(99.7%)で農薬が正しく使用されていることが確認されました。使用時期を誤るなどしている農家に対しては、農薬の適正な使用について改めて指導を行ったとのことです。
残留農薬の検査については、1,428の作物を分析したところ、全ての作物において基準値より低い値でした。こうした検査によって、国内のほとんどの農家は適正に農薬を使用しており、その場合において、残留農薬は基準値を超えることはないということが確認されました。


冒頭にも書きましたが、基準値を超えたからといって健康に影響がでるということは普通はありません。
そうした事実のうえ、こうした監視も行われています。日本の作物は安全だと自信を持って言っていいと思います。