醤油のおいしさ

五基本味には甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦い、うまいがあります。
今回は「日本人のこころ」と言われることもある、伝統的な調味料、醤油のおいしさについてまとめてみます。


醤油の味を一言でいうと・・しょっぱい、でしょうか?九州地方だと甘い、かもしれませんね。
ですが、それだけでは決して表せない独特の風味が醤油にはあります。醤油の原材料と製法から考えると、上で挙げた五基本味が全て含まれていると言えるのです。

以前の記事に詳しく書きましたが、醤油は大豆、小麦、食塩を主な材料として微生物の働き(発酵)によって作られます。大豆と小麦の成分は、長い時間をかけた発酵をすることで様々な味や香りの成分に変わり、それらが作用し合い、醤油は複雑で奥深い味に仕上がるのです。


醤油に含まれる五基本味の特徴は次の通りです。


●甘味
醤油にはブドウ糖ガラクトース、キシロースなどの糖分が約2〜5%含まれています。この中でもブドウ糖がもっとも多く、これは発酵をすることで小麦のでんぷんから生成される成分です。
九州の醤油を味わったことがありますか?初めて口にした時、普段なじんでいる醤油からは想像できない甘さにびっくりしました。
九州の醤油が甘いのは、材料に小麦をたくさん使うからではなく、砂糖など甘味料をしっかり加えているからです(そのほかに製造方式が違うということもあります)。九州で甘いものが好まれる理由には諸説あるようですが(さとうきびの栽培が盛んで砂糖が昔から手に入りやすかった、江戸時代にオランダから長崎に大量の砂糖が輸入されてきたなど)、地域の味の好みに合わせてこのような醤油が作られています。


●酸味
醤油には1%程度の乳酸や酢酸、コハク酸などの有機酸を含んでおり、これらが酸味として働きます。


●塩味
こいくち醤油の塩分は約16%です。うすくち醤油は約18〜19%と、より塩分が濃くなっています。色が薄いからといって、たくさん加えすぎるとしょっぱくなってしまうので気をつけましょう。


●苦味
苦味のもととなるイソロイシンなどのアミノ酸が含まれています。しかし、直接苦味として働くというより、酸味や塩味と一緒になってコクのもととなっています。


●うま味
材料である大豆と小麦に含まれるたんぱく質が微生物によって分解され、約20種類のアミノ酸が生成します。これらがうま味の正体となりますが、その中でも大豆から生成するグルタミン酸が大きな役割をもっています。
こいくち醤油は大豆と小麦を同量くらいずつ使いますが、照り焼きや煎餅でよく用いられるたまり醤油はほとんど大豆のみで作ります。このため、たまり醤油がもつグルタミン酸量は多く、よりうま味が強いという特徴があります。



西洋では、様々な食材やハーブ、スパイスを用いて、五基本味が絡み合うソースを作ります。
日本の醤油はそれと対照的にとてもシンプルな材料・・なのですが、そこに微生物の働きを活かすという独自の工夫を加えることで、複雑な風味の調味料になっています。
醤油に含まれる五基本味をあらためて味わいたくなりました!