大豆かイソフラボンか

イソフラボンは大豆に微量に含まれる成分で、一時期「女性の健康や美容にいい成分」として流行りました。

イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造をしており、エストロゲンの受容体に結合します。そのため、エストロゲンと同じような生体作用を発揮し、骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減に効果があるとされています。ただし、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどとは異なり、ヒトの体に必須の栄養素というわけではありません。


大豆は低脂肪でありながらたんぱく質やカルシウムが豊富に含まれており、確かに栄養素の摂取源として有用な食材であると言えます。
今回お話したいのは、イソフラボンの健康や美容への効果を期待して、サプリメントなどからイソフラボンを摂取する場合です。
イソフラボンの摂り過ぎは乳がんの発症や再発を引き起こす可能性があると言われています。ポイントは「大豆の食べ過ぎ」ではなく「イソフラボンの摂り過ぎ」ということです。


日本人は昔から大豆食品をよく食べていますが、それによる明らかな健康被害は報告されていません。そのため、普通に食品として大豆を(そして、それに含まれるイソフラボンを)摂取することについては問題がないとされています。


一方で・・最近よく見かけるイソフラボンを濃縮したサプリメントなどは、本来ならば食品から少しずつしか摂取できなかったイソフラボンを一度に多量に摂取できるという特徴があります。こうしたサプリメントの利用は、イソフラボンの過剰摂取につながる可能性を持ち合わせています。


そのため、食品安全委員会は、イソフラボンを含む特定保健用食品(トクホ)の安全性評価のために、イソフラボンの一日の摂取目安量を設定しました。
食品安全委員会が作成した報告書「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」によると、イソフラボンの摂取量目安量は70〜75mg/日となっています。


各大豆食品の100gあたりの平均イソフラボン含有量は次の通りです。
●大豆・・140.4mg/100g
●豆腐・・20.3mg/100g
●納豆・・73.5mg/100g
●豆乳・・24.8mg/100g


豆腐は一丁で大体300gくらい、納豆は1パックで50gくらいです。なので、一日に納豆2パックと冷奴を食べると、イソフラボンの摂取目安量を超えてしまいます。
これだと、あっという間にイソフラボンを摂り過ぎることになってしまいそうですが・・
先にも書いた通り、日本人は昔から大豆食品をよく食べていますが、それによる明らかな健康被害は報告されていません。


食品安全委員会によるイソフラボンの一日摂取目安量の設定は、あくまでトクホの安全性評価のためです。トクホは普通の大豆食品と違い、イソフラボンの過剰摂取につながる可能性が高いため、摂取目安量の上限値を設定しておく必要があったのです。
結果としては、イソフラボンを含むトクホを食生活に長期的・継続的に利用することを想定した場合、イソフラボンの一日摂取目安量のうち、トクホから摂取する上限は30mg/日にするとしています。また、妊婦や乳幼児、幼児はトクホなどからはイソフラボンを摂取しない方がよいとしています。


ということで・・
イソフラボンは大豆食品から摂取する限りは、目安量を超えてもただちに健康に悪い影響がでるということはありませんが、サプリメントなどからの摂取については、過剰摂取になる可能性があるのです。これはどの栄養素にも言えることですね。

イソフラボンを摂取したいと思う方は、すぐにサプリメントに頼るのではなく、まずは、大豆食品から普段どのくらいのイソフラボンを摂取しているのか?をチェックしてみるといいかもしれません。