たまごの賞味期限について

段々と気温が高くなり、食中毒が気になる季節になりました。
この時期は、たまごかけごはんや生たまごを食べるのを控えている、という人もいるかもしれません。以前の記事にも書きましたが、日本はたまごを生で食べるという食文化があるため、たまごの賞味期限は「生食する場合」を想定しています。


【たまごとサルモネラ菌
たまごは、0.03%程度というごくわずかな割合ですが、食中毒の原因となるサルモネラ菌に汚染されていることがあります。サルモネラ菌汚染率が低いのは、鶏舎の管理や出荷までの工程の衛生管理がしっかりと行われているお陰であると言えます。
そしてさらに賞味期限の設定により、たまごの安全性は高くなっています。
たまごにサルモネラ菌が含まれていれば必ず食中毒になるというわけではありません。しかし、サルモネラ菌は一定期間を経ると急速に増殖を始め、この場合に食中毒につながることがあります。


【賞味期限設定のマニュアル(改訂前)】
鶏卵業界は1998年、サルモネラ菌による食中毒のリスクを最小限に抑えるため、たまごの賞味期限設定のマニュアルを作成しました。
このマニュアルに基づき、たまごの販売業者により賞味期限が付けられています。
期限表示(*1)を付ける際には、食品に対して、微生物試験や理化学試験、官能検査などを行い、それによって得られた期限に安全係数をかけて消費期限あるいは賞味期限にします。
*1:詳しくはこちらを見てください。

たまごもこのようにして賞味期限が設定されますが、以前は起点としていたのは採卵日ではなくパック詰めされた日であったため、採卵日が違っても同じ賞味期限が付けられるということがありました。
このことがたまごの安全性に影響を及ぼすというわけではありません。しかし、昨今の消費者目線を重んじる風潮などにより、鶏卵業界としても消費者の「安心」を満たすための対応が必要になり、2010年3月にマニュアルの改訂が行われました。


【マニュアルの改訂】
改定版のマニュアルには、「たまごは採卵日を起点とし、賞味期限は採卵日から21日以内とする」という基準が明記されています。
「採卵日から21日以内」ということには、次のような根拠があります。
サルモネラ菌が急速に増殖を始めるまでの期間はたまごの保存温度と関係があり、次の式により求めることができます。

D= 86.939 − 4.109×T + 0.048×T×T
D:菌の急速な増殖が起こるまでの日数
T:保存温度

例えば・・
たまごの保存温度が10℃のとき、サルモネラ菌が急速に増殖するまでの日数は50日です。ということは、採卵してからずっと冷蔵保存しておけば、二ヵ月近くは生で食べられるということですね。

ですが、採卵してから家庭まで、常に10℃以下の状態にしておくということは難しいでしょう。
マニュアルではより現実的に、流通中はたまごの保存温度を25℃以下にするように努めるべきであると書いてあります。

たまごの保存温度が25℃のとき、菌が急速に増殖するまでの日数は14日です。さらに、販売後は家庭で7日間冷蔵保存されると見込み(*2)、採卵後21日以内という賞味期限が設定されているのです。
*2:このため、購入後は冷蔵庫に保存する旨をたまごに表示することが必要です。


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冒頭でも書いたように、こうして決められた賞味期限はあくまで「生食する場合」です。サルモネラ菌は熱に弱いので、期限を過ぎてもしっかり加熱調理すればある程度の期間は問題はないことも覚えておいてください。