いろいろな食中毒‐夏編‐

気温と湿度が上がり、食中毒が気になる季節となりました!
食中毒の原因となる細菌やウィルスには様々なものがあり、それぞれ特徴があります。今回は、特に夏に注意すべき食中毒の特徴と予防法などについてまとめてみたいと思います。


まずは、平成21年度の患者数が比較的多かったものから順に・・


カンピロバクター
平成21年度の発生事例数は345、患者数は2206名でした。
カンピロバクターは牛や鶏などの腸管に生育する細菌で、そうした肉(特に鶏肉)を食べることで食中毒にかかります。牛や鶏は腸管内にカンピロバクターを含んでいても健康な状態ですし、現在の技術で食中毒の原因菌を完全に取り除くことは難しいのです。

カンピロバクター食中毒にかかると、発熱や倦怠感、頭痛、おう吐、腹痛などの症状が起こります。潜伏期間は2〜5日です。
予防法は簡単です。通常の加熱調理で死滅します。また、生肉をつまんだ菜箸やトングでサラダを取り分けるなどすると、二次汚染する可能性がありますので、焼き肉やバーベキューの際には気をつけましょう。

原因食品としては、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のたたき、鶏ワサ、牛生レバーが報告されており、やはり加熱調理がポイントだということが分かります。レストランでも生や半生の肉を出していることがあり、好んで食べる人も多いかもしれませんが、特に小さい子どもや高齢の方、抵抗力が弱い方は重症化する可能性が高いので、避けた方がいいでしょう。


サルモネラ菌
平成21年度の発生事例数は67、患者数は1518名でした。食中毒の原因の中では多い方ではありますが、以前に比べると少なくなっています(この理由は後ほど)。
サルモネラ菌も動物の腸管に生育する細菌です。汚染されたたまごや生肉(特に鶏肉)を食べることで食中毒にかかります。

サルモネラ菌食中毒にかかると、激しい腹痛、下痢、発熱、おう吐などの症状が起こります。
予防法はカンピロバクターと同様、加熱することです。また、冷蔵保存も有効です。
たまごを生や半熟で食べる場合は、賞味期限内であるかどうか?ということと冷蔵保存していたか?ということを意識するようにしましょう。

日本はたまごを生で食べる習慣があるので、たまごの賞味期限は「生で食べる場合」として設定されています(それを過ぎても加熱すれば食べられます)。平成11年にたまごの賞味期限表示が義務化されてから、サルモネラ菌による食中毒は減っています。


次は、事例数はそんなに多くないのですが、夏に多く、また重症化することもある大腸菌による食中毒について。


腸管出血性大腸菌
平成21年度の発生事例数は26、患者数は181名でした。
食中毒を引き起こす大腸菌は複数あるのですが、O-157がほとんどです。上のふたつと同様に動物の腸管内に生育し、糞尿を通して食品や水を汚染します。
大腸菌による食中毒にかかると、激しい腹痛や出血性の下痢などの症状が起こり、重症では意識障害に陥ることがあります。

原因食品としては井戸水や牛肉、カイワレ大根などが報告されています。予防法はやはり、加熱、そして野菜はよく洗浄することです。
では、水はどのように対策したらいいのでしょうか?
水に含まれる大腸菌は塩素消毒によって死滅します。この点で、水道水は塩素消毒がされているので大腸菌の心配はありません。また、井戸水については大腸菌の有無のチェックを定期的にするよう管理者に指導されています。


ということで、多くの食中毒は加熱することで予防できることが分かりました。ですが、加熱をしても死滅しない食中毒の原因菌もあります。


黄色ブドウ球菌
平成21年度の発生事例数は41、患者数は690名でした。
黄色ブドウ球菌による食中毒にかかると、比較的早く、おう吐、腹痛などの症状が起こります。
黄色ブドウ球菌はなんと・・人間の中にも存在します。皮膚や髪の毛、口の中など・・特に化膿した傷に多く存在します。この菌自体は熱に弱いのですが、これが食べ物の中で増殖する際に作りだす毒素は熱に強く、調理レベルの加熱ではなくなりません。

予防法としては、傷口のある手で調理をしない(仕方のないときは傷口が食品につかないようにする)、調理前は手をよく洗う、作った食事はすぐ食べる(そうでないときは冷蔵保存する)、ということがポイントです。

原因食品としては、おにぎりやにぎり寿司、お弁当などが挙げられます。おにぎりは手に塩水をつけて握る・・という人が多いかもしれませんが、ラップを使って握った方が衛生的です。特に傷があるときは気をつけましょう。


そのほか食中毒の詳細については食品安全委員会ページを見てみてください。