カビは水がお好き?

この季節、食品のカビが気になります。買ったばかりのフルーツやパンに気づいたらカビが・・なんてこともあるでしょう。

さて、カビが好む環境とはどのようなものなのでしょうか?

なんとなく、ジメジメしたものが好きそうな感じがありますが・・そうです。カビはそのほかの生き物と同様、生育するのに水を必要とするのです。

カビの繁殖のしやすさと水の関係は、水分活性(AW=water activity)という指標で表すことができます。
また、この水分活性は、カビ以外の微生物(細菌や酵母など)の働きやすさの指標にもなります。微生物が働くことによって、食品は「腐敗」につながることがあります。

水分活性は、水分含有量とは違うものです。
食品中の水分は自由水と結合水に分けられます。自由水は何にも溶けていない状態の水で、塩や砂糖などが溶けている水は結合水と呼ばれます。水分含有量は、食品のなかに水分(自由水&結合水)がどれくらいの割合(%)で存在しているかを表しているのに対して、水分活性は自由水のみを対象にしているのです。
水分活性は、0から1.0までの値をとります。食品中に自由水がまったく含まれない場合は0となり、全てが自由水の場合(つまり純水)は1.0となります。


なぜ水分含有量ではなく水分活性がカビやすさ、そして腐りやすさの指標になるのでしょうか。

同じ水分含有量の食品AとBがあるとします。ただし、Aは薄い塩漬け、Bは濃い塩漬けになっています。
このとき、どちらの方が保存性は高いですか?直観的に食品Bの方がカビにくく腐りにくいことが分かると思います。
食品中に塩や砂糖がたくさん含まれている場合は、水分の中で結合水の割合が多くなることを意味しています。このとき、自由水は相対的に少ないということになります。微生物が使えるのは自由水だけです。
そのため、たとえ水分含有量が多くても、塩や砂糖がたくさん含まれているなどして水分活性が低い食品はカビにくく腐りにくいということになるのです。
各食品の水分活性は、野菜やフルーツは0.99、肉やたまごは0.98、パンは0.93、切り餅は0.92、ジャムは0.82のあたりだそうです。


微生物が好む水分活性の値はそれぞれ異なります。
もっともジメジメしたものを好むのは普通細菌で、水分活性0.9〜0.94でよく繁殖します。カビは0.80、好塩細菌は0.75以下、耐乾性カビは0.65でよく繁殖します。
また、微生物の繁殖の要因は水分だけではありません。温度、空気、養分もキーとなりますし、そもそも衛生管理を徹底した場所には微生物自体が存在しなく、カビがつくこともないでしょう。


ところで、カビはカビでも、カマンベールチーズやブルーチーズのように食べられるカビもあります。これはなぜ?
実は、こうした食品で熟成のために用いられているカビは、食用として改良、培養されたもので、毒性はないのです。味噌や醤油もコウジカビの発酵の働きで作ります。

カビと一口に言っても、食中毒の原因になる避けたいカビ、おいしい食品を作るカビ、色々あるんですね。