無塩せきハムに熟成ハム

スーパーにはたくさんの種類のハムやソーセージが並んでいます。付け合わせにしたり、お弁当のおかずに入れたり、何かと便利な加工食品です。



写真1. ハムエッグにかがか?


中には、パッケージに「無塩せき」と書かれたハムやソーセージが置かれていることがあります(上の写真のは違います)。
この無塩せきとはどういうことでしょうか?


「塩を使っていない」ということではなくて・・
ハムやソーセージの多くには亜硝酸塩という物質が発色剤として使われています。亜硝酸塩は発色剤としてのほかに、肉の臭みを取り除き保存性を高め、ボツリヌス菌の生育を抑えるという役割があります。



写真2. 発色剤は原材料表示に記載されています


ボツリヌス菌は河川や土壌の中など自然界に広く分布する菌で、ボツリヌス毒素をつくります。この毒性は最強であると言われており、ほんの少量でも健康への影響は絶大です。
ここ数年はボツリヌス菌による食中毒は起こっていませんが、過去にはいずしや缶詰、瓶詰などが原因食品として報告されています。


この亜硝酸塩は安全性が評価され、ヒトが一生涯に渡って毎日摂取しても健康に影響のでない量(ADI)をもとにハムなどへの使用量が定められています。

亜硝酸塩」というと人工的なものに感じるかもしれませんが、私たちはこの物質を野菜からも摂取しています。
ホウレンソウやレタスなどの葉物野菜には、口の中で亜硝酸塩に変換される硝酸塩が多く含まれているのです。ハムやソーセージの亜硝酸塩の数十倍を野菜から摂取していると言われています。


・・話をハムに戻します。
無添加を志向する消費者のために亜硝酸塩が使用されていないものも販売されており、それが無塩せきハムなのです。無塩せきハムには保存性を高める亜硝酸塩が含まれていないため、開封後はより早く消費することを意識するようにしましょう。


また、「熟成」と書かれたハムやソーセージもよく見かけます。
この熟成とは、7日間以上塩せき液に肉を漬け込み、肉の色素を固定し特有の風味を醸成することをいいます。特定JAS規格により、こうした項目を含むいくつかの規定を満たしたもののみが「熟成」と表示できると定められています。
なお、塩せきをする場合には、漬けこんでいる間に菌が増殖することを防ぐために亜硝酸塩を加えるため、無塩せきかつ熟成というハムはないでしょう。


今度ハムを買うときには、無塩せきハムと熟成ハムの原材料表示を見比べてみてください。