第一回栄養成分表示検討会(消費者庁)

12月20日消費者庁栄養成分表示検討会の第一回が行われました。

現在の日本では栄養成分表示は任意ですが、本検討会で来年の夏をめどに義務化に向けた議論を行うことになっています。
消費者庁では今年10月にトランス脂肪酸の情報開示に関する指針案を出しており、栄養成分表示の中でトランス脂肪酸をどのように扱うのかということも注目されています。

冒頭に内閣府特命担当大臣である岡山トミ子氏の挨拶があった後、栄養成分表示をめぐる事情、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針案、という二つの議題についての説明および議論が行われました。
本検討会は15名の委員で構成されていますが、今回は仲谷正員氏以外の14名の委員が出席しました。
配布資料は消費者庁サイトに掲載されています。


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【注意】資料の説明を飛ばして議論部分のみを知りたい方は、以下文中に赤字で示してある<委員からの意見や質問(抜粋)>の項目を見てください。


【座長および座長代理の選出】
座長は和洋女子大学学長である坂本元子氏、座長代理は女子栄養大学栄養学部教授である山田和彦氏に決定しました。


【栄養成分表示をめぐる事情について】
消費者庁からの説明>
資料2「栄養成分表示をめぐる事情」
●日本の栄養成分表示制度の概要
(1)含有量表示
・栄養成分表示をする場合は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの含有量を記載する(一般表示事項)。
・13のビタミンと12のミネラル、糖類、飽和脂肪酸コレステロールについては一般表示事項ではないけれど表示の基準が定められている。
・コラーゲンやガラクオリゴ糖などについて、表示基準は定められていないが、科学的根拠に基づく限り表示してもよい。
(2)栄養強調表示
・国民の栄養摂取状況からみて、欠乏が健康保持増進に影響を与える栄養成分については、それが多いことを強調する表示ができる(「カルシウム含有」など)。
・過剰摂取が健康保持増進に影響を与える栄養成分については、それが少ないことを強調する表示ができる(「糖類ゼロ」など)。
・こうした栄養強調表示をする場合は、一般表示事項をともに記載する。
(3)栄養成分の機能表示
・12のビタミンと5のミネラルについては、栄養成分の機能の表示をすることができる(栄養機能食品)。ただし、一日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分の含有量が、上限値と下限値の間におさまっていなければならない。
・例えば、ビタミンCについては「ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、高酸化作用を持つ栄養素です」という機能表示ができる。ただし、注意喚起表示として「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。一日の摂取目安量を守ってください」という表示を併記しなければいけない。
・栄養機能食品は個別に許可を受ける必要がない。

●栄養成分表示基準に関する執行手続き
栄養成分表示基準に対する違反については、内閣総理大臣は業者に勧告を行い、それに従わない場合は50万円以下の罰金などの罰則を適用する。

●栄養成分表示制度の変遷
・昭和27年の食料難の時代に、栄養成分を補給できる旨の表示をするために栄養改善法の中に特殊栄養食品制度が創設された。
・平成3年には、国民の健康志向の高まりや栄養成分をアピールする食品が増加してきたことなどを背景に、大臣許可制の栄養強化食品が定められた。
・平成7年に栄養改善法が改正され、特殊栄養食品制度の廃止、栄養表示基準の施行、栄養強化食品は栄養表示基準に従った自己認証型に、という変更があった。
・平成15年に栄養改善法は廃止され、健康増進法が施行される。栄養表示基準についての変更はなかった。

●健康・栄養政策と栄養成分表示基準
厚生労働省で進められる健康・栄養政策と、消費者庁で進められる栄養表示政策は整合性がとられている。

●栄養成分表示の実態調査
消費者庁において、市販の食品(633品)の栄養成分表示の実態調査を行った。中間報告によると、全体の約8割に一般表示事項が、約2割に栄養強調表示があった。
・一般表示事項は、調味料と酒類で少なかった。
・栄養強調表示は、清涼飲料水、乳製品、食用油・同加工品で多かった。

●栄養成分表示に関する消費者の意識
・平成20年度の国民生活センターのモニター調査によると、食品を選ぶ際に栄養成分表示が重要だと考える人は約6割だった(期限表示や原産国は9割以上の人が重要だと回答)。また、栄養成分表示の義務化についてはよいことだと思うと回答した人は8割以上だった。
・平成17年度の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、栄養成分表示を見たことがあると回答した人は全体の約4割だった。そのうち、栄養成分表示を参考にして食品を選んだことのある人は、男性では約5割、女性では約7割だった。

●栄養成分表示をめぐる国際的な動向
・深刻な慢性疾患を問題としているアメリカでは1994年に栄養成分表示が義務化された。その後、ブラジルやオーストラリア・ニュージーランド、カナダなども続いた。最近では台湾、韓国、中国、インドなどで義務化されている。
・国際食品規格を作成するコーデックス委員会では、栄養成分表示に関するガイドラインが定められている。日本はこれに従って現在の制度になっている。
アメリカでは13の栄養成分の表示が義務化されている。栄養成分の含有量を1サービングサイズあたりで表示することが特徴であり、139の食品群においてサービングサイズに関する規定がある。また、2011年からはレストランチェーンの定番メニューや自動販売機の食品において、栄養成分に関する情報の提供を義務づけることになった。
EUでは栄養成分表示は任意だが、現在義務化に向けた話し合いが行われている。


<委員からの意見や質問(抜粋)>
・(蒲生恵美氏)栄養成分表示を支持する声が多いという調査結果があったが、具体的にどの表示項目を、といった詳細の調査はあるか?
→(消費者庁)そういったデータはない。
・(佐々木敏氏)栄養成分表示制度は加工食品以外も対象とするのか?
→(消費者庁)鶏卵を除く生鮮食品は対象としない。
・(飛田恵理子氏)国際的な動向については、表示の現状だけではなく、製造の時点でどのような規制があるのかなども知りたい。
・(山田和彦氏)海外の方向性を知ることも大切だが、我が国の国民の健康状態を考えることが必要だ。
・(座長:坂本氏)国際的な動向について、表示の内容だけを取り上げて説明をしていたが、どうしてそのような制度になったのか、その背景が大切だ。
・(渡部浩文氏)市販の食品が栄養成分表示基準に従っているかをどのようにチェックしているのかについても資料を揃えてもらいたい。
・(鬼武一夫氏)なぜ栄養成分表示を義務化しなければならないのか、目的をはっきりとしなければ、海外でやっているから日本でもやるという話になってしまいかねない。
・(徳留信寛氏)栄養成分表示を義務化している国での費用対効果に関するデータはあるか?今後義務化した場合は、中小企業への負担を考える必要がある。
→(消費者庁)現在のところ費用対効果のデータは確認できていない。
・(浜野弘昭氏)栄養成分表示を義務化する目的について議論し、委員の中で同じ土俵を作っておかなければいけない。
→(消費者庁)国民の健康意識の向上を背景として、商品選択に資するための栄養成分表示の義務化を考えている。
・(迫和子氏)数年前は栄養成分表示をあまり見かけなかったが、最近は増えてきた。それは国民の要求があったからなのかもしれない。経年推移のデータはあるか?
→(消費者庁)以前のデータはない。現在、栄養成分表示の実態について、詳しい分析を行っている。
・(蒲生氏)栄養成分表示をすることがどれだけ健康に寄与するのかを知りたいので、(栄養成分表示を義務化している)各国の疫学調査なども調べて欲しい。
・(飛田氏)栄養成分表示基準に違反したときの罰則が非常に軽いと思った。健康不安便乗ビジネスをなくしていく一つの方法としてこうした情報提供があるので、例えば「当社調べ」の根拠について分かるようにするなど、使い勝手のよい表示にしてもらいたい。
・(座長:坂本氏)生産者側と消費者側でまったく利害が異なるので、その間をどうするのかというのがこの検討会。ある国では、事業者の生産量や収入によっては義務を免除するというルールもあり、そうした視点もある。


トランス脂肪酸の情報開示に関する指針(案)について】
消費者庁からの説明>
参考資料1「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針について(案)」
トランス脂肪酸の情報開示に関する指針(案)の概要
トランス脂肪酸を摂取すると心疾患のリスクを高めるという報告がある。北南米やアジアなどでは栄養成分表示のひとつとしてトランス脂肪酸の含有量の表示を義務づけている。
・日本人の一日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量は比較的少ないが、最近の研究では若年層や女性などに摂取量が1%を超える集団があると報告されている(WHOは1%未満にするよう勧告している)。そのため、日本においてもトランス脂肪酸の含有量を表示する際の指針を作成することにした。
・指針案では、トランス脂肪酸の含有量を表示する場合には、一般表示事項および飽和脂肪酸コレステロールの含有量をともに表示するとしている。含有量の単位は100gもしくは100ml、一食分などの一単位当たりとする。また、食品100g当たりのトランス脂肪酸の含有量が0.3g未満の場合は「0g」と表示することができる。トランス脂肪酸の含有量を分析する方法は、国際的に推奨されているAOCS Ce1h-05またはAOAC 996.06による。

パブリックコメントに寄せられた主な意見
トランス脂肪酸の情報開示に関する指針案について、10月8日〜10月29日にパブリックコメントを募集したところ、224通の意見が寄せられた。現在、報告をまとめている途中だが、参考資料3に主な意見を抜粋した。


<委員からの意見や質問(抜粋)>
・(鬼武氏)この意見を踏まえて議論するのか?
→(消費者庁)この資料では主なものを抜粋しており、まとめは現在作成中だ。
・(塩谷茂氏)指針案を提案したことは時期尚早であると思った。国内の事業者の90%以上が中小企業であるが、彼らは栄養成分の含有量を推定値として計算することになるだろう。しかし、トランス脂肪酸に関しては食品標準成分表でも整理されておらず、実効性が小さいと思う。また、「0g」表示に関しては、食品100g当たりではなく、一度にわずかしか使用しない調味料などもあるので、一食分とした方がいいと思う。
・(蒲生氏)表示をするためには目的がはっきりとしていなければならない。摂取量が1%を超える集団がいるという指摘があったが、トランス脂肪酸を多く含む食品はドーナッツやフライドポテトなど対面販売のものも多いので、(小売店で販売される商品に)表示をすることにどれだけの実効性があるのだろうか。もし本当にリスクがあるということであれば、表示ではなく製造の時点で規制をした方がよいだろう。数字だけが独り歩きをして実態よりも大きな風評被害が出てしまうということもあるので、食品安全委員会のリスク評価を待ってからの方がいいと思う。
・(山根香織氏)トランス脂肪酸に心疾患のリスクがあることは分かっていて、日本でも摂取量が多い人たちがいるので表示はするべきだ。食品業界をどのように支援するのかは考えていかなければいけない。
・(飛田氏)トランス脂肪酸だけではなく、飽和脂肪酸コレステロールも含めて表示を考えていくことは日本においても時期尚早ではない。


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次回の検討会は1月31日です。
「栄養成分に関する情報」「栄養成分表示の社会的ニーズ」をテーマとして、委員である畝山智香子氏および佐々木敏氏による発表が行われる予定です。