本の紹介「こうしてニュースは造られる」

日々たくさんの情報を発信するテレビや雑誌などのニュース、みなさんはどのように付き合っていますか?

ニュースは正しい情報を伝えるもの・・確かにそういう役割を持つものもあります。ですが、実際には記者のフィルターを通して「造られた」ものも多くあります。
そのようなニュースがつくられる背景について、毎日新聞の小島正美さんが本を書かれました。「こうしてニュースは造られる」(小島正美著、2010年エネルギーフォーラム、定価1,260円)です。



小島さんは生活報道部の編集委員として、おもに環境や健康、食の問題を担当しておられます。

この本では、具体的な報道の事例を挙げ、それらのどこに問題があり受け取り手に誤解を生じさせていたのかを指摘しています。
例えば、記憶に新しい冷凍ギョーザ事件について。当時のあるニュース番組では、専門家が出て「(残留農薬のせいではなく)高濃度の農薬がピンポイントで混入した可能性が高い」という妥当な解説をしました。ところが、同時に流された映像は、中国の農家が無造作に農薬を散布しているものでした。

ニュース番組の映像は受け取り手の感情に訴え、解説(ナレーション)は理性に訴える、そして、その二つに乖離がある場合は映像が優位に働くのだと書かれています。実際に、農薬を散布している映像をみて、「中国の農産物は農薬まみれで危険」と誤解してしまった人は少なくないと思います。


では、なぜメディアはそのような誤解を生むようなことをするのでしょうか?
そもそも記者が持っている知識に偏りがあるということもあると思いますが、小島さんは記者の「読者のニーズに応える意識」を問題点のひとつとして挙げています。
ニュースは「商品」なので読者からの反応がよい方がよく、そのため、記者は読者に好まれるような論調を選択していることがあるということです。
これでは、いつまでたっても正しい情報が出回らない、負の循環に陥っているのではないでしょうか。

そこで、情報の受け取り手としては、ニュースとの正しい付き合い方を身につける必要があります。
小島さんはニュースに頻出し不安を煽るであろう言葉を挙げています。例えば、「未知の危険性」、「長期の摂取でどうなるか不明」、「大量に摂取すれば危険」など。本ではこのほかにもいくつかの言葉や表現を挙げ、その背景についても解説しています。
このような不安を煽る言葉が出てきたら一度そのニュースを冷静な目で見てみるようにする、これを意識することが負の循環から抜け出る第一歩になると思います。