今が旬の黒い食べ物

突然ですが、これは何でしょう?



海苔です!

お茶に新茶があるように海苔にも新海苔があり、まさに今が海苔の旬なのです。


日本人は海苔に限らず海藻全般をよく食べていますね。

食用にする海藻はほぼ全て、緑藻、紅藻、褐藻の三つに分類できます。では、海苔はどれに当たるでしょうか。
ちょっとイメージと違うかもしれませんが、紅藻です。海苔は紅藻のアマノリ属(スサビノリやウップルイノリなど)からできています(*)。
お好み焼きにかける青海苔は緑藻です。褐藻には昆布やワカメなどがあります。
寒天の材料となるテングサも紅藻に分類されます。寒天についてはこちらをご覧ください。


【海苔の色の正体】
植物が緑色に見えるのは、緑色の光合成色素であるクロロフィルを持つからです。
紅藻はクロロフィルのほかに、赤色の光合成色素フィコエリスリンや青色のフィコシアニンを持っています。このように複数の色素が合わさっているため、ノリは黒っぽく見えるのです。

ところで、ただの乾燥海苔は真っ黒なのに、焼き海苔は何だか緑色っぽく見えます(最初に挙げた写真は焼き海苔です)。
これは、フィコエリスリンの「熱に弱い」という特徴からくるものです。海苔を加熱すると緑色っぽくなるのは、赤色の色素が分解されたためなのです。


【海苔の養殖】
海苔の材料となるアマノリは日本各地の海の岩場に生育していますが、現在では板海苔の8割程度が養殖のスサビノリを使用しています。
ノリの養殖と加工が始まったのは江戸時代だと言われています。ですが、当時は養殖といっても、海中に木を立て、そこに自然にからみついたノリを育て採取するという単純なものです。
養殖が飛躍的に発展したのは、1949年にイギリスの藻類学者であるキャサリン・メアリー・ドリュー氏が藻類の繁殖サイクルを解明してからです。

ノリの繁殖サイクルは一年です。
まず春に親となる個体から果胞子が出て、貝殻に付着し貝殻内で糸状体を作ります。この糸状体は見た目としてはカビのようです。
そしてそのまま夏を過ごし、水温が低くなり始めた頃に糸状体から胞子を貝殻の外に出し、発芽します。続いて葉体(採取される状態)に成長していきます。
こうした知識をもとに人工的に胞子をうえつける養殖の方法がうまれたのです。


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ノリの採取は11〜3月に行われ、生のまま流通するか板海苔などに加工されます。ということで、今がちょうど新海苔の季節というわけです。



ところで・・

板海苔のパックや缶には乾燥材が同封されていることが多いですよね。海苔は湿ってしまうと、しんなりと食感や風味が落ちてしまうのです。(中にはしんなりとした海苔が好きという方もいるかもしれませんが・・)
一度湿ってしまった海苔でも、醤油や酒などで煮て佃煮にするとおいしいご飯のお伴になりますよ!