厚生労働省リスクコミュニケーションで聞いた「輸入食品の安全性確保について」

1月28日、厚生労働省による食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会が開催されました。

今回は、厚生労働省で行っている輸入食品の安全性確保に関するお話をご紹介します。なお、意見交換会では厚生労働省のほかに、全国消費者団体連絡会および味の素グループの取り組みについてのお話もありました。


☆「輸入食品の安全性確保について」(厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室長、道野英司氏)

輸入食品は個人で持ち込んだものを除いて、全て届け出制です。
届け出件数は年々多くなっており、平成21年度は182万件でした。一方で重量は最近減ってきています(平成21年度は3,060万トン)。高齢化社会が進んできていることもあり、この重量は今後も増加はしなさそうだと思われます。
輸入食品の安全性チェックは、輸出国、輸入時、国内という三段階で行われています。


【輸出国での安全性確保】
輸出国の制度の調査や、必要に応じた現地調査を行っています。
例えば、アメリカにおいて農産物の制度を調査しています。日本とアメリカでは残留農薬に係る安全管理に関する情報の共有が行われており、また、日本で残留基準値に違反した事例などはアメリカ国内の業界団体へ情報提供をしています。
残留基準値は、アメリカの方が緩い作物もあれば日本の方が緩いものもあります。しかし、全体で見たときの仕組みは同じです。
過去一年間では、カナダ(牛肉)、アメリカ(牛肉)、オーストラリア(畜産物)、タイ(マンゴー、マンゴスチン)、ベトナム水産物)、中国(鶏肉、豚肉、ほうれんそう、ねぎ、うなぎ、食品安全全般)に対する調査が行われました(*1)。
*1:カッコ内は調査の対象とした品目。中国への調査が多いのは輸入量が多いから。


【輸入時における安全性確保】
検疫所で輸入届け出の審査が行われます。
残留農薬や動物用医薬品に関してはモニタリング検査が行われます。その検査に引っ掛かったものがある場合は、モニタリング検査の頻度をアップして行います。さらに違反が見つかり違反の蓋然性(確実さ)が高いと判断された場合は、検査命令が出されることになります。
それに対して、ただちに検査命令が出される場合もあります。健康被害の発生のおそれが考えられるO-157リステリア菌アフラトキシンが同一の輸入食品で見つかった場合などです。


【輸入者への指導】
違反を繰り返す(直近60件の検査の違反率が5%以上)輸入者に対しては、原因の改善や再発防止といった指導を行います。それでも改善が見られなかった場合は営業停止処分が講じられます。
指導件数は、平成20年は30社、平成21年は36社、平成22年は41社でした。
二回以上指導を受けた輸入者は平成18年〜平成22年9月の間では12社ありました。この12社における違反内容で最も多かったのはカビ毒です。熱帯や亜熱帯地方ではカビ毒が一般的に存在しているのです。


【個別課題について】
BSE
アメリカとOIE(国際獣医事務局)は、30ヵ月齢以上の高リスク牛(異常のある牛)を検査しています。EUにおいてはイギリスやフランスなど16ヶ国は48ヵ月齢以上、11カ国は30ヵ月齢以上のと畜牛(健康な牛)を検査しています。また、高リスク牛に関しては48ヵ月齢以上のもの(一部の国は24ヶ国齢以上)を検査しています。
それに対して日本は、21ヵ月齢以上のと畜牛と24ヵ月齢以上の死亡牛の検査を義務にしています。この基準は科学的に正当性があるのか議論となっています。なぜなら、現在は牛の飼料規制(*2)の効果が出てきており、以前生まれた牛しかBSEに感染し得ないだろうことが分かっているのです。
また、除去する特定危険部位の範囲についても日本の基準は5年前の評価がもとになっており、他国よりも厳しく設定されています。
*2:BSEが広がる原因となったのは肉骨粉を飼料として与えていたことから。


残留農薬
日本では個別の残留農薬基準値が定められていない作物に関しては一律基準(0.01ppm)を当てはめ、それに合わないものは流通させないというポジティブリスト制があります。
0.01ppmという値は非常に厳しいものであり、ポジティブリスト制が施行された平成18年から違反件数は多くなりました。平成18年度の残留農薬の一ヵ月平均の違反件数は前年度の9.4倍にもなりました。その後は制度の周知が進んだことで少し落ち着きましたが、それでも施行前の5倍以上の違反件数が出ています。
また、動物用医薬品についても農薬と同様のポジティブリスト制があります。


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残留農薬をどのように監視しているのかについては、こちらの記事をご覧ください。