食の安全都民フォーラム「健康食品ウソ?ホント?」

3月4日、東京都による食の安全都民フォーラム「健康食品ウソ?ホント?」が開催されました。

健康食品には、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)とその他のいわゆる健康食品があります。この中には医薬品のように見える錠剤やカプセルの形をしたサプリメントも含まれます。良い使い方ができれば問題ないのですが、特にサプリメント状の健康食品については健康被害が頻繁に報告されており、その使い方について注意が必要です。

今回は消費生活アドバイザーの若村育子氏による基調講演の内容を中心にご紹介したいと思います。


☆「健康食品とはどんなもの?」(消費生活アドバイザー、若村育子氏)

健康食品の市場規模は約1兆8000億円です。
健康食品をめぐる現状として、多種多様なものがある、広告やCMが多い、客観的な情報が少ない、利用している人が多い、利用する理由は様々、といったことが挙げられます。
利用者はインテリでお金持ちの人が多いという特徴があるようです。また、私が知ってショックだったのは、子どもにサプリメントを与えている人が少なくないということです。


【健康食品とは】
健康食品は健康によいとして販売されている食品のことですが、はっきりとした定義があるわけではありません。
そして、健康食品そのものの法規制はありません。ただし、サプリメントを含んだ健康食品はあくまでも食品の範疇なので、一般の食品と同じように、食品衛生法JAS法、健康増進法などの規制は受けています。


【健康食品の特徴】
いわゆる健康食品と特定保健用食品(トクホ)の二つに大別して特徴や問題点を整理したいと思います。
●いわゆる健康食品について
・ひとつひとつの安全性や有効性が検証されていないものが多い。(食品の範疇なのでその義務がない。)
・品質はまちまちで中には問題のあるものもある。
・値段の根拠が不明瞭である。
・過剰摂取や飲み合わせなどによる健康被害が後を絶たない。
・契約、販売方法でトラブルになることが多い。(特定商取引法はあるけれど、手続きには手間がかかる。)
・虚偽、誇大広告らしきものもある。
・有効成分の量を表示していないものが多い。(その義務がない。)

●トクホについて
・いわゆる健康食品よりは信頼性が高い。
・しかし、効果は限定的である。例えば、有効性試験はBMIが高い人のみを対象としている、試験食は特別に調整してあるものを用いているなど、有効性がでる条件は限られている。


【医薬品との違い】
医薬品は試験管テストの後、動物実験、ヒト試験を続けて行い、副作用と効果を科学的根拠に基づいて判定しています。
それに対してサプリメントなどでは動物実験止まりのものが多く、信頼できるヒト試験のデータは少ないのです。このことは個別の製品だけでなく、成分についても当てはまります。ただし、科学的な検証が全てとは言えません。「信じるものは救われる」という言葉があるようにプラセボ効果はあります。

注意したいのは、パッケージや見た目が医薬品まがいの健康食品です。
医薬品と健康食品の違いは表示を見れば分かります。
例えばあるサプリメントの表示には「召し上がり方」と書いてありました。それに対して医薬品には「用法・用量」と書いてあります。


【健康食品による健康被害
「食品だから安全」と言われることがありますが、そんなことはなく健康食品による健康被害は多く報告されています。
病気を持つ人は健康被害につながる可能性が高いので特に注意が必要です。直接的な被害のほかにも、「健康食品をとっているから大丈夫」と適切な医療を受ける機会を逃がすことによる健康被害あります。


【健康情報のウソホントを見分ける】
数年前に健康情報番組が発端で起こった納豆騒動から、健康情報の真偽を見分けることの大切さが学べます。
当時「納豆を食べると痩せる」ということが放送され、スーパーで納豆が品切れになってしまいました。しかし、実際のところは太る痩せるは摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスの問題であり、納豆を食べたからといって痩せるはずがないのです。

健康情報に従ってしまう素直な消費者を返上しましょう。
そのためには、テレビの情報をそのまま信じるのではなく自分で調べるようにしましょう。私のおすすめは企業のお客様相談室に問い合わせるということです。
ここでひとつ強調しておきたいのは、科学的な情報は「現時点」でのものだということです。例えば、バターとマーガリンの問題がありました。以前はマーガリンの方が健康にいいとされていましたが、最近になってそうでもなさそうだとなりました。健康にいいか悪いかは量の問題なのです。


【望ましい食生活とは】
食事摂取基準や食事バランスガイドなど、食べ方の指針はいろいろありますが、共通するキーワードとして「品数多く・腹八分目・野菜たっぷり」ということを覚えてもらいたいと思います。腹八分目については、三日間の平均で構いません。三日間で9回の食事をとるので、その平均が腹八分目であればよいのです。

食生活について誤解しがちなことが三つあります。

一つ目は、食事摂取基準に定められた量を毎日摂らないといけないのか?ということです。適量は個人によっても違うし、その日の活動量によっても違います。なので、食事摂取基準の単位は「一日当たり」となってはいますが、平均して摂っていれば問題ありません。

二つ目は、ビタミンやミネラルは多く摂るほどよいか?ということです。実際は食事摂取基準で上限値が設定されているビタミンやミネラルは十数種類あります。この上限値はサプリメントなどによる過剰摂取のおそれが出てきたために設定されたものです。普通の食事で過剰摂取になることはあまりありませんが、サプリメントを使うときには注意しましょう。

三つ目は、今の野菜は栄養価が落ちているか?ということです。決してそうではありません。食品成分表の成分値が以前は旬の時期の値だったのですが、現在は通年の平均を出しています。また、分析方法が変わった、品種が変わったということなどもあります。よって、「その分をサプリメントで補わなければ」ということはありません。


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基調講演の後、パネルディスカッションにて(財)日本健康・栄養食品協会の増山明弘氏と千葉科学大学薬学部教授の安田一郎氏による発表が行われました。
増山氏はトクホについて、安田氏はダイエットを標榜する健康食品についてお話されました。

安田氏によると、平成14〜18年に報告された中国製のダイエット用健康食品数種による被害患者数は796名、死亡者数は4名だったそうです。患者は通販や個人輸入でこうした健康食品を購入していました。
また、タイ製のダイエット用健康食品(ホスピタルダイエット)は各地で健康被害を起こしており、つい最近の平成22年12月にも未成年女性で甲状腺機能低下の報告がありました。
このホスピタルダイエットのサイトでは、性別、年齢、身長、体重を打ち込むと「何番のサプリメントが合う」と出てくるそうです。こうしたサプリメントのパッケージに表示はなく何を摂取しているのかが分からない状態であり、実際は医薬品の成分が含まれていたとのことです。

こうしたことから、安田氏は、ダイエットを標榜する健康食品、特にネット上で購入するようなものについては注意が必要だと強調されていました。