農林水産省-米の放射性物質調査に関する説明会

8月3日、農林水産省による米の放射性物質調査に関する説明会が開催されました。
本説明会は開催日の前日に告知されたのにも関わらず、会場にはおよそ200人の生産者や事業者などが訪れました。
配布資料はこちらで公開されています。


米の放射性物質調査のポイントは次の通りです。
●収穫前に予備調査を行う。目的は放射性物質の濃度の経口を把握することである。予備調査は14都県を中心に行い、ここで放射性セシウム濃度が一定水準(200ベクレル/kg)を超えた場合は、本調査において当該市町村を重点的に調査することとする。
●収穫後、乾燥調製が終わった段階で本調査を行う。本調査で放射性セシウム濃度が暫定規制値(500ベクレル/kg)を超えた場合は、旧市町村単位で出荷制限する。また、本調査の結果が出て暫定規制値を超えていないことを確認するまでは出荷自粛をしてもらう。
●出荷制限は平成23年産について途中解除は行わない。出荷制限となった米は全て廃棄処分する。


<傍聴した感想>
米の放射性物質調査は、予備調査と本調査により構成されることが発表されました。現在でも様々な作物で放射性物質の調査は行われていますが、予備調査を行うのは米が初めてです。
すでに先手として行われている対策もあります。土壌中1kgあたりの放射性セシウムが5,000ベクレルを超える地域での米の作付け制限です。5,000ベクレルという数字は、米の暫定規制値が1kgあたり500ベクレルであり、土壌から稲への放射性セシウムの移行係数が0.1であるということから設定されたものです。
秋の予備調査で稲の濃度が200ベクレルを超えた地域については本調査を重点的に行うということですが、作付け制限の基準となった土壌濃度から考えると、そうした地域は少なくないのではと思います。広域で重点的調査がされることになった場合は、日本にある検査機器をフル稼働するレベルになるとのことで、現状でも牛肉や作物の検査で大変そうなのに大丈夫だろうかと心配になりました。


***


●傍聴記録
農林水産省による説明】
<これまでの経過>

本年4月には稲の作付け制限を行った。
放射性セシウムの土壌から稲への移行係数が0.1であるとされ、また、稲の暫定規制値は500ベクレル/kgだったので、逆算をして、土壌中に5,000ベクレル/kg以上の放射性セシウムを含む地域については作付けを禁止した。福島県の調査によると、5,000ベクレル/kgを超える地域は避難区域とリンクしていたということだった。

●こうした対策をとっている上で、万全を期するために、この秋に収穫される米の調査を行う。


<調査の概要>
●調査は予備調査と本調査の二つがある。
●予備調査は、放射性物質濃度の傾向を把握することを目的にする。収穫一週間前の水田に植わっている状態の稲を採取して調査する。調査対象は14都県(福島、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川、宮城、山形、新潟、長野、埼玉、東京、山梨、静岡)を中心に、その他自主的に行う県を含む。予備調査で放射性セシウムが一定水準(200ベクレル/kg)を超えた場合には、当該市町村を本調査の重点調査区域にする。
●本調査は収穫して乾燥調製が終わった状態の稲に対して行う。重点調査区域については15haにつき一点(およそ集落ごとに一点)、その他の区域については旧市町村ごとに一点を採取して調査する。


<出荷制限について>
●本調査の結果、暫定規制値(500ベクレル/kg)を超えていた場合、旧市町村単位(平均200ha)で出荷制限を行い、廃棄処分を義務付ける。
●本調査の結果が出て暫定規制値を超えていないことを確認できるまでは米の出荷を自粛してもらう。
出荷制限の単位を旧市町村とした理由は、米は生産量が非常に多く、合併市町村も多いので、市町村単位で管理すると多量の米を一括して見ていかなければならないからである。また、旧市町村より細かな単位にすると恣意的な線引きが出てきてしまう可能性があり、今回は農家にはっきりと線引きが認識されている旧市町村を単位とした。
平成23年産米について出荷制限の途中解除は行わない。
●出荷制限となった区域で生産された米については食糧法上の手当てを行い、出荷制限の実効性を担保する。
●損害賠償の請求とリンクさせることにより、廃棄処分が確実に行われるように、国・都県・市町村・関係団体が一体となった取り組みを推進する。具体的な取り組みはこれから話し合いの上、決定する。


【質疑応答(一部抜粋)】
●米は白米と米ぬかに分かれるが、仮に500ベクレルの放射性セシウムが検出されたとすると、その7割の350ベクレルは米ぬかに含まれると言う。米ぬかは飼料や肥料にも使われるが、買い取ってもらえない場合、この処理についてはどうするか?
→油やぬか床など食用に使われる米ぬかは、暫定規制値の「その他」の500ベクレル/kgが適用される。飼料や肥料として使われる米ぬかは、先日公表された規制値(飼料は300ベクレル/kg、肥料は400ベクレル/kg)のもとで取り引きしてもらいたい。
この規制値のもとで使えなくなる場合や買い取りを拒否された場合、関連事業者の損害賠償は適切に行われるように努力していきたい。我々としてもぬかという非常に大切な有機資源がこういった形で使いにくくなることは残念であるが、汚染の拡大を防ぐために一定の規制をしていく。

●調査のコストはどこが負担するのか?調査結果は公表されるのか?
→調査は農林水産省の枠組みのもと都道府県が主体となって行う。コストは都道府県と農林水産省が負担する。
検査法は公定法であるゲルマニウム半導体検出器を用いる。この機器はそれほど豊富にあるわけではなく、対象区域全体で15haに一点を調査するとなると全部で数千点になり、機器をフル稼働する水準となる。この水準で調査すれば、汚染の程度はかなり明らかになると考えられる。
調査結果は、その他の作物と同じように、場所や数値など速やかに公表する。

●調査対象区域の14都県は数値として結果が出てくるが、それ以外の調査しない区域については出てこない。食べても大丈夫だとどのように説明するか?
原発事故の食品への影響には二つのタイプがある。
一つ目は作物の表面に直接放射性物質が降り注いで付着する場合で、春先のホウレンソウなどでずいぶん暫定規制値を超えたものがあった。二つ目は今回想定されるタイプであり、土壌中に含まれる放射性物質を根から吸収する場合である。汚染のレベルとしてはこの二つのタイプで相当な違いがある。
土壌中の放射性セシウムの濃度に対して、稲に含まれる濃度は0.1である。たくさんのデータから統計的に出した値ではあるが、はしょった言い方をすると、土壌中の濃度が5,000ベクレルであった場合に、玄米中の濃度が500ベクレルを超える確率は10%以下であるという意味である。春に土壌中の濃度が5,000ベクレル以上の地域で作付け制限をした上で、今回さらに綿密な調査を行うということである。都道府県で土壌中濃度を測定しているが、作付け制限を行った地域以外で5,000ベクレルを超えるような土壌は実際に見られていない。
調査対象区域については14都県のほかにも積極的に調査を考えている県はあり、区域の数は増えると考えている。ただし、我々としては14都県しっかりやればきちんとした調査になると思っている。

●稲のどの部分の調査を行うのか?
玄米を測定をする。
これまでの知見から言えば、玄米を精米して白米にする過程で放射性物質の濃度は下がると思われる。「じゃあ白米で測ればいいじゃないか」という議論もあるが、基本的には玄米で流通しており、玄米で食べる人もいるので、玄米で管理する。

これから新たに収穫される米が入手できたら、玄米を精米した場合にどのように濃度が変わるのかなどの調査研究をやっていきたいと思っている。

●調査の対象は生産者が納品した米ということで、農協のカントリーエレベーターやライスセンターは対象外だと聞いたが、その安全確認はどのように行うのか?
→カントリーエレベーターやライスセンターは大量の米が一括して管理され、どこの地点で収穫したものかは若干不明確になる。どこで収穫したものかが明確になるようなサンプリングをしたいということであり、決してカントリーエレベーターやライスセンターの米が調査の対象になっていないということではない。

●廃棄処分となった米はどのようにするのか?
一般廃棄物として処分できるものもあれば、濃度によってはそれができないものもある。現状で放射性廃棄物の行き場所がないという実態もあり、この点については政府全体として対応していかなければならない。

●暫定規制値以下であったものについて、安全証明のようなものは出せないのか?
→出荷制限になった米について平成23年産は出荷制限が解除されることはなく、個々に証明を出すものではない。一方で事業者が任意で表示することに関しては、今でも流通の過程で検査がされることがあり、証明のようなものが存在しているということを聞いている。そのことについて我々がああだこうだと言う問題ではないと思っている。

●食肉でもそうだが、各都道府県の公表データのフォーマットと厚生労働省のものがばらばらで編集が難しい。農林水産省では各都道府県と同じフォーマットを使って公表してもらいたい。
厚生労働省のサイト上にある産地別データは、加工が可能なエクセルファイルでもあるので見てもらいたい。