第八回栄養成分表示検討会(消費者庁)-最終回-

7月20日消費者庁栄養成分表示検討会の第八回が行われ、報告書が完成しました。

以前の検討会の傍聴記録はこちら→第一回第二回第三回第四回第五回第六回第七回


本検討会は15名の委員で構成されており、今回は全員が出席しました。
配布資料は消費者庁サイトに掲載されています。


今回は、前回までの議論を踏まえた報告書案が発表され、それに基づいた議論が行われました。各委員から様々な指摘がありましたが、最終回ということで文章の言い回しや表現の仕方に関することが多かったように感じます。
今回出た意見を反映させた最終的な報告書(PDF)は、8月23日に公表されました。


報告書のポイントは次の通りです。
●本検討会では、栄養表示の義務化に向けて整理すべき課題について検討し、報告書をとりまとめた。
●本検討会では、現在の状況を踏まえ、次の三つの選定基準に照らし合わせて、栄養表示をする際の栄養成分の優先度の見直し作業を行った。

  • (1)国民の栄養摂取状況からみて、その欠乏や過剰な摂取が健康保持増進に影響を与えているもの。
  • (2)健康や栄養に関する基本的な知識として国民全員が知っておくべきであると考えられるもの。
  • (3)国内外の科学的根拠をもとに、予防的観点から対応が求められているもの。

●その結果、新たな栄養表示基準において、一般表示事項としては、エネルギー、ナトリウム、脂質、炭水化物、たんぱく質の順が適当であるとされた。また、一般表示事項以外は、食物繊維、飽和脂肪酸トランス脂肪酸コレステロール、糖類、ビタミン・ミネラルが挙げられた。一般表示事項以外の成分の表示順序については議論していない。
●優先度の高い栄養成分として位置づけられたものは、食品添加物や期限表示などの義務表示項目と比較しても、その重要性は高いと考えられる。しかし、表示の実効性を確保するために、表示の適用範囲の決定や、誤差の許容範囲の決定、消費者に分かりやすい表示をする、監視制度の整備など、必要な措置を講じられることが前提となる。
●今後は、今回の検討会で取りまとめた骨格を踏まえ、引き続き消費者や事業者などの意見を聞きながら、栄養表示の義務化に向けて作業を続けていく。
●日本人を対象とした栄養疫学や消費者行動などのデータを収集する研究を進め、栄養表示が日本人の健康保持増進にどのように貢献しているのかについて、継続的に成果を検証し、見直していくことが必要となる。



<傍聴した感想>
栄養成分表示検討会は今回で最後の傍聴記録です。
昨年12月から一ヵ月に一度のペースで開催されたこの検討会。栄養表示の今後の方向性について課題が整理され、報告書にまとめられました。
最後の事務局からのコメントにあるように、この検討会の大きな特徴は、日本人の栄養素摂取状況を再解析し、その科学的データをもとに議論したということです。科学的データを踏まえることの重要性が改めて確認されました。
この後は、消費者庁のスケジュールによると、9月に立ち上げられる「食品表示一元化法検討会」に報告書が渡され、さらに議論が進められていきます。食品表示一元化法には栄養表示のほかに、原料原産地表示や遺伝子組換え表示などがテーマとして盛り込まれており、平成24年度中の法案提出を目標としています。
栄養表示は国民の健康保持増進を目的としていますが、原料原産地表示や遺伝子組換え表示はそうではありません。消費者の商品選択に資するための表示です。この場合は、栄養表示のように科学的データをもとに議論するわけではなく、極端に言うと、「表示の範囲はできるだけ広い方がいい」という立場と、「広すぎる範囲は現実的ではない」という立場が議論を交わし、歩み寄り、一番バランスの良いポイントを見つけていくことになると思います。(とっても難しそう・・)


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消費者庁事務局による報告書案の発表】
事務局より、資料「栄養成分表示検討会報告書(案)」に関する発表がありました。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(蒲生恵美委員)項目2に「適切な食生活を実践する契機となる効果が期待される」という記述があるが、効果が期待されるという点についての根拠を確認する必要がある。畝山委員からも、同じ効果が得られるならばコストは低い方がいいという指摘があった。
項目5「今後の方向」の最後の段落に「継続的に成果を検証していく」とあるが、義務化の必要性についても、この検証を踏まえたものであって欲しい。
→(赤松利恵委員)蒲生委員の意見に賛成で、やはり、「継続的に成果を検証し」の後に「見直していく」というのを入れて欲しい。

●(徳留信寛委員)「別紙」において、ビタミン・ミネラルは生命活動と生活習慣病予防に重要なので、たんぱく質のすぐ下に書いて欲しい。また、現在の一般表示事項ではたんぱく質が炭水化物の上にあるが、今回、その順をあえて変えた理由は何か?
→(事務局)選定基準(1)から、エネルギー、ナトリウム、脂質という栄養成分を選定した。そして、選定基準(2)から摂取状況に問題はないが基本的知識として知っておくべき必要があるものとして三大栄養素が挙げられ、炭水化物とたんぱく質を選定した。
ビタミン・ミネラルの重要性は承知しているが、WHOなどにおける科学的根拠は、食物繊維や飽和脂肪酸と同程度ではなかった。
→(徳留氏)ビタミン・ミネラルは生命活動と生活習慣病予防に大変重要であり、食物繊維より上に持っていくべきだと思う。
→(浜野弘昭委員)食物繊維と糖類は炭水化物の下位概念で、飽和脂肪酸トランス脂肪酸コレステロールは脂質の下位概念なので、これらをビタミン・ミネラルと同じ位置づけで考えるのは難しいと思う。炭水化物の下で食物繊維と糖類をどう扱うのか、脂質の下で飽和脂肪酸トランス脂肪酸などをどう扱うのか、ということがあって、たんぱく質、ビタミン・ミネラルとなるのではないか。
→(事務局)「別紙」においては、食物繊維以下の栄養成分については優先度を検討したものではない。

●(佐々木敏委員)項目3の「(3)脂質」に、「脂質とは、飽和脂肪酸トランス脂肪酸などの総称であり」とあるが、含有量から言うとトランス脂肪酸は微々たるものなので、この記述は適切ではないと思う。通常は、「飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の総称であり」としている。また、「(3-1)飽和脂肪酸」に「飽和脂肪酸をとりすぎると・・・中性脂肪を増やし」とあるが、中性脂肪は増やさないと思うので、確認する。

●(坂本和子座長)今回出た意見をもとに案を修正し、報告書を完成させる。

●(原敏弘審議官)最後に事務局を代表して御礼申し上げたい。この検討会は、昨年の12月に始まり、八回の議論を経て取りまとめに至った。委員間の活発な議論のたまものだと考えている。特に、日本人の摂取状況の科学的データを整理し、多くの課題の整理をし、方向性を示せたことが大きい。報告書に反映できなかった意見についても行政に反映できるところは反映していく。そういう意味では今回の検討は第一歩であり、引き続きの協力をお願いしたい。