第一回食品表示一元化検討会(消費者庁)

9月30日、消費者庁の第一回食品表示一元化検討会が行われました。

本検討会は様々な立場にある16名の委員から構成されています。今回は手島玲子委員以外の15名が出席しました。

第一回目会合ということで、まずは消費者庁事務局から検討会開催の要領および食品表示制度のレビューに関する説明がありました。その後、各委員から、検討会に期待することや要望などのコメントが発表されました。
配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
今回を第一回とし、来年の夏を目標に、食品表示一元化に関する報告書のとりまとめに向けて議論が開始しました。
一ヵ月に一回のペースで開催され、全十回の予定です。数名の委員からは、十回で十分な議論ができるのか?という疑問の声が上がました。
食品表示は現在、主に食品衛生法JAS法、健康増進法の三つの法令によって規制されていますが、この検討会ではそれを一元化して管理する仕組みを探ることを目指しています。そのため、「食品表示一元化」という題目の中で議論すべき論点は多岐に渡っているのです。
そもそもなぜ一元化するのかというと、現在の食品表示は三つの法令によって規制されているため、消費者にとっても事業者にとっても、複雑に分かりにくくなってしまっているという問題があるからです。しかし、中には法令が分かれているからこそのメリットもあるはずです。例えば、JAS法は消費者の商品選択に資するための項目を定め、食品衛生法は安全性を確保するための項目を定めている、という考え方をしています。こうした考え方の違いがあるからこそ、食品表示に関する審議は行いやすくなっている部分もあるのではないでしょうか。もし一元化したら、新たな案件が出てくる度に、「これは商品選択のための表示か」「安全性にも関わる表示か」という審議をまず行わなければならなくなってしまうかもれません。
来年夏という目途ははずれ込んでしまうとしても、合理的な形で報告書をまとめてもらいたいです。


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【座長および座長代理の選出】
本検討会の座長は宮城大学産業学部長の池戸重信委員、座長代理は神戸大学大学院法学研究科教授の中川丈久委員に決定しました。


消費者庁事務局による資料の説明】
事務局より、資料1「食品表示一元化検討会開催要領(案)」および資料2「食品表示制度をめぐる事情」について説明がありました。

食品表示一元化検討会開催要領(案)について>
●これまで消費者庁において食品表示の現行制度に関する課題の把握を行ってきたが、一定の成果が得られたため、「食品表示一元化検討会」を開催し、食品表示の一元化に向けた検討を開始する。
検討項目は、食品表示の一元化に向けた法体系のあり方、消費者にとって分かりやすい表示方法のあり方、表示事項のあり方などである。
●現行制度の課題や海外の現状を踏まえ、関係者からのヒアリングを行いつつ検討を進め、来年6月を目途に報告書をとりまとめる。

<日本の食品表示制度について>
現在、食品表示に関する主な法律には、食品衛生法JAS法、健康増進法がある。食品衛生法は食品の安全性の確保を目的にしており、アレルギー表示や添加物表示などが当たる。JAS法は消費者の選択に資することを目的にしており、原材料名表示や原産地表示、遺伝子組換え表示などが当たる。健康増進法は国民の健康増進を推進することを目的にしており、栄養表示や特別用途表示などが当たる。
●表示基準の企画立案や表示規制にかかる事務は消費者庁が行っている。企画立案に際しては消費者委員会が意見を述べている。執行に当たっては、厚生労働省農林水産省消費者庁と連携して実施している。

<各国食品表示の現状について>
●平成21年の内閣府国民生活局の調査結果から、EU、米国、韓国における食品表示のルールをまとめた。これは現在の最新のルールとは矛盾がある可能性に留意する。
EUでは包装食品と健康食品で共通して、名称、内容量、原材料名、消費期限あるいは賞味期限、製造者の表示が義務となっている。場合によって表示すべき項目には、使用方法、保存方法、生産国、遺伝子組換え、有機がある。生鮮食品については個別に規定されている。
米国では生鮮食品と加工食品、健康食品で共通して、名称、内容量、原材料名、使用方法、調理方法、保存方法、栄養表示、製造者・生産国の表示が義務となっている。消費期限あるいは賞味期限の表示は、乳児用食品については義務だが、その他については任意である。遺伝子組換え、有機の表示は任意である。
韓国では生鮮食品と加工食品、健康食品で共通して、名称、内容量、原材料名、保存方法、消費期限あるいは販売期限、製造年月日の表示が義務となっている。食品により決まりが異なる表示には、使用方法、栄養表示、賞味期限、製造者・生産国、原産地、遺伝子組換え、有機、アレルギー、照射がある。
原材料表示について。全ての国で、原材料表示は重量で多い順に記載することとなっている。韓国では、特徴的な原料(写真や絵の表示があるものなど)は%表示をする必要がある。
原産地表示について。EUでは、原産地表示がないと消費者を誤認させる可能性がある場合は義務である。米国では、牛、羊、鶏、山羊、豚切り身・挽き肉、魚介類、生鮮農産物、マカダミアナッツピーカンナッツ朝鮮人参、ピーナッツについて義務である。韓国では、特定の原材料が50%を超える場合はそれについて表示、そうではない場合は上位2位までを表示することになっている。
食品添加物について。EUでは、その添加物が最終製品に影響を及ぼさない場合は義務ではない。米国では、保存料を添加する場合、その名称と機能を表示する。また、着色料は、検定を義務づけられるものについては個別名を表示するが、検定を義務づけられないものについては“Artifical Color”などと表示してもよい。韓国では、キャリーオーバーの場合を除いて、全ての添加物の表示が義務である。
アレルギー表示について。EUでは、付記?aに挙げられている品目(グルテンを含む穀類、甲殻類、卵および卵製品、魚および魚製品など、全14項目)のうち、最終製品に残っているものについて表示が義務である。米国では、牛乳、卵、甲殻類、ツリーナッツ、小麦、ピーナッツ、大豆の8品目およびこれらに由来するたんぱく質を含む原材料について義務である。韓国では、鶏、牛乳、そば、南京豆、大豆、小麦、さば、カニ、エビ、豚、もも、トマトの12品目、また、交差汚染の可能性についての表示が義務である。

<一元化に合わせて検討することについて>
栄養表示の義務化に向けた検討を行う。消費者庁において平成22年12月から本年8月まで行われた「栄養成分表示検討会」において検討課題(栄養表示の適用範囲、分かりやすく活用しやすい表示方法、監視・執行のあり方など)が整理された。
健康食品の表示について検討を行う。消費者庁において平成21年11月から平成22年8月まで行われた「健康食品の表示に関する検討会」において論点整理がなされた。その後、消費者委員会においてさらにトクホに関して議論が行われ、本年6月に報告書がとりまとめられた。この報告書で今後の検討課題(科学的知見の収集について、再審査手続き開始後の情報提供について、許可の更新性の導入についてなど)が挙げられた。
加工食品の原料原産地表示の拡大について検討を行う。消費者庁では原料原産地の義務表示の着実な拡大を目指しており、本年3月31日には「黒糖および黒糖加工品」「こんぶ巻」の原料原産地表示を新たに義務化した。今後の進め方については、消費者委員会おいて検討が進められ、本年7月に報告書がとりまとめられた。義務対象品目の選定条件は、原産地に由来する原料の品質の差が加工食品の品質に大きく反映されると思われる品目としている。


【各委員からのコメント(一部抜粋)】
(市川まりこ委員)現行の表示ルールは複雑で分かりにくいので、消費者は適切に読みとれていないことがある。例えば、アレルギー表示の代替表記などである。また、場合によっては誤解を招いていることもある。例えば、遺伝子組換え不使用や糖質ゼロという表記などがあり、これらは消費者をミスリードしている。「使ったものを書く」という基本姿勢が大切であると思う。
(上谷律子委員)表示する項目がとても多いので、統一した書き方が必要だと思う。安心・安全というのは大切だが、消費者はどこまで求めているのかを見極める必要がある。
(鬼武一夫委員)検討会を進める上で5つ主張したいことがある。一つ目は、検討会の役割は食品衛生法JAS法、健康増進法を一元化することであるが、まずは現行のルールの矛盾点や問題点を明らかにする必要があり、そのために食品表示の理念を確認するべきであること。二つ目は、国際的な視点から考える必要があること。三つ目は、これまでの各検討会で残した宿題について何らかの答えを出すこと。四つ目は、食品表示の対象にアルコール飲料を含めるかどうかということ。五つ目は、用語の定義を行うこと。
(迫和子委員)食品表示は大切な情報だが、複雑で分かりにくい。やはり生命に関わる項目の優先順位が高い。特に糖尿病は40歳以上で3-4割がかかっている可能性があり、緊急の課題である。また、いわゆる健康食品の中には錠剤・カプセル型のものがあり、中身が全く分からず過剰摂取の危険があるため、こちらも重要性が高い。
(田粼達明委員)消費者にとって優先度の高い項目を分かりやすく表示することが大切である。その際には国際基準を見ながら検討するべきである。現場で使いやすい表示を考えていきたい。
(中川丈久委員)唯一の法律家として検討会に参加する。今回は消費者の選択を確保するために一元化を検討しているということで、消費者庁の設立意義としては良い方向だと思う。また、ルールを守らない者に対してはどのように対応するかについても考え、有効性を上げることも必要である。
(仲谷正員委員)小売は食品だけでなく色々な消費財を扱っているので、薬事法に関する部分については今後に期待している。食品表示には色々な項目があるので、もっと簡素化する必要がある。事業者にとっては間違いにくい表示、消費者にとっては分かりやすい表示というものを作っていきたい。
(中村幹雄委員)今回示された三法令だけでなく、トレーサビリティ法や景品表示法などもある。これらについてはどうするか。また、広告については対象とするかどうか、栄養表示のナトリウム量は食塩相当量にするかどうかなどについても検討したい。
(二瓶勉委員)消費者に分かりやすい表示を目指すのはもちろん、事業者にとっても分かりやすいルールにすることが必要である。鬼武委員も言ったように、用語の定義は並行してやっていかないと後々障害が出てくると思う。
(堀江雅子委員)消費者に分かりやすい表示を作ってもらいたい。食品衛生法JAS法で解釈が異なる項目があるので統一するべきである。また、ばら売りの惣菜については表示免除のある項目があるが、最近は惣菜を買う人が増えているので、その点も含めて検討していく必要がある。
(丸山善弘委員)表示について審議する上で、何のための表示か、誰のための表示かなど、全体を大きく押さえることがまずは大切だと思う。今回配布された事務局の資料にはそうしたものが含まれていなかったので、あえて強調したい。
(森修三委員)平成24年度中に法案提出を目指すということだが、検討事項はかなり多いので、やや前のめりすぎかと思う。まずは優先度を検討するべきである。また、表示の義務付けだけでなく、事業者の任意の取り組みを助長するような仕組みも大切である。
(森田満樹委員)表示について、これまで個別の議論は行われてきたが、全体的な議論は行われてこなかった。例えば、文字の大きさや表示項目の優先度についてである。表示の内容を知る機会はラベルだけでなく、ウェブや電話窓口もあるので、何でもかんでもラベル上で書かせるのはどうだろうか。また、現在、表示ルールに違反したものは全て回収・廃棄されているが、原料の表示順位の記載間違いなど、健康に関わらないものについてはその必要があるだろうか。食品廃棄という別の問題が出てくる。
(山根香織委員)農林水産省厚生労働省国税庁など、表示に関わる省庁と一緒に議論したいと思う。一度だけ呼んでヒアリングするのではなく、長く一緒に議論を重ねたい。
(池戸重信座長)表示の機能や役割を原点に戻って確認すべきである。消費者への情報提供の中で表示はどういった役割を持つのかという広い視点でまず考えてみるのもいいと思う。


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次回の検討会は10月25日、検討項目についての検討を行う予定です。