厚生労働省、薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会・放射性物質対策部会 合同会議(10月31日、BSEについて)

10月31日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会・会放射性物質対策部会の合同会議が開催されました。議題は、食品の放射性物質の規制値とBSEの再評価についてです。
今回はBSEに関する部分の傍聴記録をご紹介します(*)。
放射性物質に関する部分の傍聴記録はこちらをご覧ください。


主なポイントは、
●1992年にイギリスを中心にBSE感染牛が確認された。感染が広がった原因は、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を飼料として用いていたためと考えられる。
●日本は現在、BSE対策として飼料規制を行うほか、と畜場で全ての牛の特定危険部位を除去している。
●21か月齢以上の牛についてはBSEに感染していないかの検査をしている。20か月齢以下は検査する必要がないが、全ての自治体が自主的な検査を続けている。
●飼料規制を行った結果、国内では2003年以降に出生したものでBSE感染牛は確認されていない。世界でもBSE発生件数は年々少なくなっている。
●2005年に、食品安全委員会によるBSEのリスク評価が行われた。
●2009年に日本は国際獣疫事務局(OIE)におけるBSEステータスが「管理されたリスクの国」となった。アメリカやカナダ、フランスなど32か国がこれに分類されている。
●2007年に、アメリカとカナダ側から輸入条件見直し協議の要請が来た。要請の内容は、国際基準に則した貿易条件への早期移行である。今後の安全対策を捉えなおすために食品安全委員会に再評価をお願いする。

配布資料はこちらで公開されています。


<傍聴した感想>
2005年に行われた食品安全委員会BSEのリスク評価から6年。輸入条件見直し協議の要請などを背景に、現状のBSEのリスクを捉え直すため、食品安全委員会へ再評価を依頼することになりました。
日本で牛肉の安全性を保つために行われているBSE対策は、飼料規制と特定危険部位(病原体がある場合、その99%が蓄積する部分)の除去が中心となっています。
全頭検査は安全性のための対策として必要なものではありません。それでも、全ての自治体は自主的に全頭検査を続けています。その理由の一つに「自分のところだけ止められないから」ということがあるかもしれません。毎年かかる不必要で多額なコストは、自治体の財政を圧迫するという大きな問題を生んでいるのではないでしょうか。今回の再評価が、適切な措置に踏み出す契機になればと思います。


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●傍聴記録
【事務局からの説明】

厚生労働省事務局から、牛海綿状脳症BSE)対策に関する経緯および現状について説明がありました。
BSEとは>
BSEは牛と水牛に感受性があり、感染した場合は3-7年程度の潜伏期間の後、死に至る。治療法はない。
・1992年にイギリスを中心にBSE感染牛が確認された。感染が広がった原因は、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を飼料として用いていたためと考えられる。
・ヒトへ感染した場合は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJD)が発症する。vCJD患者数は、2011年1月までで世界中で222人いる。


<国内で行われているBSE対策>
日本は現在、BSE対策として飼料規制を行うほか、と畜場で全ての牛の特定危険部位SRM)を除去している。SRMの除去は、ヒトがvCJDに感染するリスクを下げるために重要である。
21か月齢以上の牛についてはBSEに感染していないかの検査をしている。20か月齢以下は検査する必要がないが、全ての自治体が自主的な検査を続けている。
一般的にBSEは61か月齢などの高月齢で発症する。これまで国内で確認された中で最も低いのは21か月齢である。
・日本ではこれまで36頭のBSE感染牛が確認されている。飼料規制を行った結果、発生件数は少なくなり、2003年以降に出生したものでBSE感染牛はいない。
・2005年に、食品安全委員会によるBSEのリスク評価が行われた。
・2009年に日本は国際獣疫事務局(OIE)におけるBSEステータスが「管理されたリスクの国」となった。アメリカやカナダ、フランスなど32か国がこれに分類されている。


アメリカとカナダからの輸入条件見直しの経緯>
BSEの発生により、1996年にイギリス産牛肉とその加工品の輸入を中止した。その後、EU諸国、BSE発生国産の輸入も中止した。2003年にはカナダとアメリカからの輸入を中止した。
2005年の食品安全委員会のリスク評価の結果を受けて、アメリカとカナダからの牛肉の輸入を再開した。輸入の条件は、その牛肉が20か月齢以下の牛由来である証明があること、特定危険部位が除去されていることである。
2007年のOIE総会で、アメリカとカナダのBSEステータスが「管理されたリスクの国」に認定された。これを受けて、アメリカとカナダ側から輸入条件見直し協議の要請が来た。要請の内容は、国際基準に則した貿易条件への早期移行である。
・世界的にもBSE発生件数は少なくなっている。1992年は37,316頭であったが、2010年は45頭、2011年(9月30日現在)は12頭である。
・今後の安全対策を捉えなおすために、食品安全委員会に再評価をお願いする。


<各国で特定危険部位の範囲が異なる>
・OIEのBSEステータスが「管理されたリスクの国」である場合の貿易条件の一つに特定危険部位の除去がある。OIEの基準では、特定危険部位の範囲は、30か月齢以上の頭部・せき髄・せき柱、全月齢の扁桃・回腸遠位部としている。
特定危険部位の範囲は各国で異なっている。アメリカとカナダはOIEの基準と同じである(ただし、カナダでは、扁桃は30か月齢以上に対して定めている)。EUでは、30か月齢以上のせき髄、12か月齢以上の頭部・せき髄、全月齢の扁桃・腸としている。
・それに対して日本では、全月齢の全ての部位を特定危険部位としている。


【議論&質疑応答(一部抜粋)】
●(栗山真理子委員)日本ではヒトへの感染例はあるか?今後の予測はあるか?
→(事務局)イギリスでは、1999年の29人、2000年の25人がピークだった。2004年は9人、2009年は3人、2010年は0人だった。
日本ではイギリス滞在歴のある人が一人発症している。今後の予測も含めて食品安全委員会に諮問するが、流通している牛肉のリスクを検討するので、基本的には現状のリスクを審議してもらう。
●(阿南久委員)OIEの基準をどのように日本の基準に採用するかが今後の課題となる。一部のマスコミでは、アメリカの輸入条件を緩和するためだという報道が見受けられるが、そうではないと思う。今でも国内では全自治体が全頭検査をやっており、そうした措置をどうするのかというのが問題だ。科学的知見でもって措置がとられていくようにするためには、コンセンサス作りを重視する必要がある。
●(事務局)今後、今回の諮問の内容を食品安全委員会と調整する。また、対策全般の再評価ということで、輸入の関係国との調整も進めていきたい。