東京都立食品技術センター講演会で知った豆知識

4月23日に東京都立食品技術センターの第一回講演会が行われました。

講演は、味覚のお話と産地・品種判別技術のお話という二部構成でしたが、今回は「おいしく味わう体のしくみ」というテーマで畿央大学教授の山本隆氏により提供されたお話の中で知った豆知識をいくつかご紹介します。
なお、産地・品種判別技術についてはこちらの記事をご覧ください。
品種を判別する技術
原産地を判別する技術


☆「おいしく味わう体のしくみ」(畿央大学教授、山本隆氏)
太った人はいても、太ったキリンはいない―というように、食は動物にとってあくまで生きるためのものです。しかし、人間はそれに加えておいしいから食べる、楽しいから食べるということがあります。

おいしさは、視覚と嗅覚、口腔感覚、内臓感覚という感覚の流れで伝わっていきます。口腔感覚とは、噛んで(咀嚼)、味わって(味覚)、飲み込むこと(嚥下)で、おいしさの基本となります。


【年をとると味が分からなくなる?】
味は、舌の横に多く存在している味蕾(みらい)で受け取ります。
味蕾の細胞は10日から1週間で入れ替わり、人間の感覚の中では衰えにくいといわれています。一方で、衰えやすい感覚は嗅覚で、60代を境にしてぐっと鈍くなります。「年をとって味が分からなくなった」とよく言われるのは、味覚ではなく嗅覚のせいではないかと思います(他にも唾液の分泌量が少なくなる、嚥下しにくくなるということもありますが)。


【基本味の中でもっとも感じやすいのは?】
五基本味(苦味、酸味、甘味、塩味、うま味)の濃度と味の強さの関係に関する実験がありますが、この中で苦味がもっとも薄い濃度で味を感じるという結果でした。そして、この傾向に人種差、年齢差はほとんどありませんでした。
苦味は「危険なもの」をあらわしているので、人間は危険物を探知するために、薄い濃度でも苦味を感じられるようになっているのではないかとのことです。


【パンダはうま味が分からない】
中国の研究チームがパンダのゲノム解析をしたところ、うま味を受け取る受容体が機能していなく、パンダは肉のうま味を感じられない可能性があることが分かりました。
パンダは肉の消化酵素の遺伝子はそろっているけれど、植物の主成分であるセルロースを分解する遺伝子はありません。それなのに、肉ではなく笹を食べる理由・・それは肉のうま味を感じられないからということがあるのかもしれません。ちなみに、パンダは腸内にいる微生物の働きでセルロースを分解しているそうです。


なお、山本氏は日本科学未来館のシンポジウムでも講演をしています。こちらの傍聴記録をご覧ください。
日本科学未来館シンポジウム「おいしく食べて健康づくり」