大豆はどこからやってくる?
豆腐や納豆、油揚げ、味噌、醤油など、日本の食卓によく登場する食品の原材料となる大豆。大豆はもちろん畑からやってくるのですが、今回は「原産地」についてのお話です。
日本の食料自給率が低い(カロリーベースで40%、生産額ベースで70%)ということを一度は耳にしたことがあると思います。
その中でも、重量ベースで自給率がほぼ100%の食品もあります。例えば、お米、みかんなど。
たまごや乳製品もほとんど国産のものしか見かけない気がします。実際に、自給率はそれぞれ96%と71%と高い値です。ただし、鶏や牛の飼料の自給率を考えあわせた場合、たまごの自給率は10%、乳製品は30%となります。
では、大豆の自給率はどのくらいでしょうか?
日本の伝統的な食品の原材料となり、油にも加工される大豆ですが、その自給率は6%程度とごくわずかです。おもにアメリカやカナダ、中国から輸入しています。平成21年度の食料需給表によると、同年度に国内で消費された約369万トンのうち、国産大豆は約23万トンでした(概算値)。
割合からして貴重な国産大豆ですが、日本における平成21年度の大豆の作付面積トップ3は順に、北海道、宮城、秋田でした。
国産大豆は、豆腐(61%)、煮豆惣菜(12%)、納豆(12%)、味噌・醤油(8%)などに使われています。カッコ内の数字は総生産量に占めるそれぞれの使用用途の割合です。
国産大豆の半分以上は豆腐に使われているということです。
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さて、みなさんは豆腐を買うとき、大豆の原産地を気にしていますか?
生鮮食品のようにはチェックしていない、という人は多いのではないでしょうか。
というのも、原産地表示は、生鮮食品および生鮮食品に近い20食品群の加工食品については義務となっていますが、豆腐は任意です(*)。
*納豆も任意。大豆水煮は義務である20食品群に含まれている。
ですが、食品メーカーとしては、国産大豆を使っている商品については、その旨をアピールしたいところ。パッケージに大きく「国産大豆使用」と書かれた豆腐を見たことがあるでしょう。
加工食品品質表示基準によると、そのように国産であることを強調する表記は、原材料大豆の100%が国産であるものにのみ可能で、輸入した大豆が混じっているものには「国産大豆○○%使用」などと、その割合を表記しなくてはなりません。
品質表示基準は全ての加工食品が守らなければいけないルールですが、豆腐と納豆については特別に、任意の「豆腐・納豆の原料大豆原産地表示に関するガイドライン」が作成されています。
このガイドラインによると、国産の大豆である場合は国産である旨を、外国産である場合は原産国名を表記することとしています。また、「国産大豆○○%使用」という表記は消費者の誤認をまねく可能性があるなどの理由から、100%が国産であるもの以外には、強調表示はしないとしています。
さらに、豆腐の原産地表示にかかわるものとしては、任意の「生産情報公表加工食品の日本農林規格」もあります。
この規格においても、豆腐の原材料大豆の原産地は表示することとなっています。前述したガイドラインとの違いは、国産の大豆である場合は都道府県名を表示する点です。
この規格ではほかに、原材料大豆の種類や生産年などの公表を定めています。こうした項目に従った豆腐については、第三者機関に認定された後、生産情報公表JASマーク(下図)を付けることができます。
なお、豆腐のほかに、牛肉や豚肉などでも生産情報公表の日本農林規格が作成されています。
図.生産情報公表JASマーク(見たことがありますか?)
このように、豆腐と納豆については、加工食品品質表示基準を基本として、任意のガイドラインおよび規格が存在しているのです(下表)。
表.豆腐と納豆の原材料大豆の原産地にかかわる表示のルール(「生産情報公表加工食品の日本農林規格」は納豆は対象外)
加工食品品質表示基準 | しなくてよい | 100%の場合:「国産大豆使用」 それ以外:「国産大豆○○%使用」 | |
豆腐・納豆の原料大豆原産地表示に関するガイドライン | 国産:「国産」 外国産:「原産国名」 | 100%の場合:「国産大豆使用」 それ以外:強調表示はしない | |
生産情報公表加工食品の日本農林規格 | 国産:「都道府県名」 外国産:「原産国名」 |
品質表示基準は全ての製品が守るべきものですが、そのほかの二つについてはどの程度効いているのでしょうか?
スーパーに並んでいる豆腐と納豆を見てみたところ、豆腐については原産地表示をしているものもあればしていないものもありました。
納豆については、15製品すべてに原産地表示がありました(国産9、外国産6)。
また、豆腐と納豆いずれについても、「国産大豆使用」「国産大豆100%」という強調表示をしている製品はありましたが、「国産大豆○○%使用」というように、100%でない表示をしているものはありませんでした。
基準が複数存在していることもあり、メーカーごとに表示項目が異なるという状況。日本人にとって非常に身近な食品だけに、意外に感じました。