食品安全委員会‐放射性物質の食品健康影響評価に関するWG(第三回)‐

5月12日、食品安全委員会放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループの第三回会合が開催されました。

以前の傍聴記録はこちらです→第一回第二回

今回の議論には8名の専門委員、5名の専門参考人と7名の委員が参加しました。(欠席者は専門委員である圓藤吟史氏、川村孝氏、津金昌一郎氏、林真氏、村田勝敬氏、鰐淵英機氏。)
配布資料はこちらで見ることができます。


今回の会合では、アルファ核種の知見のとりまとめに関する報告が行われ、その後に質疑応答および議論が行われました。今回決められた主な点は次の通りです。
●ウランについて、腎毒性と、放射性物質としての毒性の両方の面から検討を進める。
●放射性核種について、高濃度における知見ではなく、現実的な被ばく量に沿うような知見を参考にする。
●アルファ核種のとりまとめは、佐藤洋氏、川村孝氏、村田勝敬氏、吉永淳氏が担当となる。


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●傍聴記録
【資料1の説明】
食品安全委員会事務局から、資料1に関する説明がありました。
内容は、放射性物質の食品健康影響評価の基本的な考え方についてです。特に、「管理措置に評価が影響されるようなことがないよう留意する」という点と、「当面は、外部被ばくは著しく増大しないことを前提として、放射性物質の食品健康影響評価について検討する」という点が焦点となりました。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(遠山千春専門委員)「外部被ばくは著しく増大しないことを前提として」の記述について。この委員会においては被ばくしたときにどれだけの健康影響があるのかを検討するのではないか?
→(佐藤洋専門委員)今回は外部被ばくは含めず、内部被ばくだけを検討するということでよいか?
→(山添康座長)そう。管理措置は外部被ばくも合わせて講じられるべきであるが、その議論は管理機関で行われる。
→(遠山氏)外部被ばくと内部被ばくを切り分けるのは難しいので、まずは総合した値でどの程度なら大丈夫かを検討して、それが食品にどのように振り分けられるのかを議論するのだと理解していた。
→(山添座長)難しいだろうことは分かる。だが、この委員会では、内部被ばくでどこまでなら大丈夫かを検討し、食品において許容できる量を決める。外部被ばくを全く考えないというわけではないが、食品からの内部被ばくに主眼をおく。


【資料2,5〜7の説明】
事務局から、資料2及び5〜7に関する説明がありました。
内容は、ウランの知見とりまとめと、ウラン、プルトニウムアメリシウムキュリウムの比放射能および換算係数、国際機関における基準値についてです。現在リスク評価のために整理している論文は93報あり、そのうちウランに関するものは60、プルトニウムに関するものは30、アメリシウムに関するものは3、キュリウムに関するものは見つけられていません。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(山添座長)ウランの毒性は、放射線としてのものか、化学物質としてのものか、どちらを議論するか。
→(遠山氏)前回の会合で、ウランは酸化型になるので水には出てこないという話を聞いた。極端な高濃度であればウランの化学物質としての毒性が出るが、実際に現在放出されているのはかなり低いレベルだ。現実としてどの程度曝露されているのかを考え、そのレベルで議論するのがいいと思う。
→(山添座長)ウランの腎毒性はかなり低いレベルでも出てくる。
→(吉永淳専門委員)腎毒性が出ないレベルにすれば、放射線としての健康影響も出てこないだろう。
→(佐藤氏)ウランの腎毒性がはっきりしているのであれば、それと放射線としての毒性を並べてみることが必要だ。
→(滝澤行雄専門参考人チェルノブイリ事故ではウランは検出されていない。実際のデータに基づいてやるのがいいと思う。
→(山添座長)実際には曝露はあまりないが、もし食品に入った場合にどうなるかということについて諮問がきたので、その検討を行っている。
→(食品安全委員会事務局)高濃度すぎるケースが現実的でないとすれば、議論をしやすくするために、事務局で資料を振り分けて提供していく。

●(食品安全委員会事務局)単位は重量ベースにするかシーベルトにするか、どちらがいいか?(化学物質としての毒性は重量で、放射線としての毒性はシーベルトで表す。)
→(山添座長)シーベルトをベクレルに変えるときにも換算係数がある。ある程度まとめておかないと、値を使ってもらえないということもある。


【資料3,4の説明】
事務局から、資料3,4に関する説明がありました。
内容は、プルトニウムの知見とりまとめと、アメリシウムの知見とりまとめについてです。

<議論&質疑応答(一部抜粋)>
●(遠山氏)キュリウムについては、検討に使える論文がひとつもないということだった。個別ではなく最後にまとめて扱うということになるかもしれない。

●(佐藤氏)アルファ核種を担当する委員4名でもう少し詳しく見てみる。どうやってまとめるのかはここで相談させて欲しい。
→(山添座長)作業の締め切りは5月27日を考えている。各委員は新しい資料などがあれば5月19日までに提出すること。


次回は5月25日にベータ核種(放射性ヨウ素放射性セシウム)について議論される予定です。


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(傍聴した感想)
今回はウラン、プルトニウムアメリシウムキュリウムが議題となりました。
アメリシウムキュリウムについてはまだ参考資料がほとんどない状態ですが、ウランとプルトニウムについては毒性に関する資料が集まってきました。今後は議論をすみやかに行うためにも、事務局側で過度な高濃度における毒性に関する資料は振り分けて提供していく、ということでした。
ここでいう過度な高濃度がどのレベルになるのかによりますが、振り分けた結果、どのような毒性に関する資料が残るのかについては気になるところです。ちなみに、ウランについては低濃度でも腎毒性があり、資料2によると、WHOではラットにおける91日間亜急性毒性試験の結果から最少毒性量を0.96mg/L(雄:0.06mgU/kg /日、雌:0.09mgU/kg /日)としています。
毒性に関する資料が集まった後は、どの程度の濃度までなら健康影響が出ないのかを検討し、その濃度は食品にはどのように振り分けられるのかを考えることになります。