お茶の栽培方法-玉露、てん茶、かぶせ茶-

下の写真を見てみてください。これは抹茶のもととなる茶葉です。



こちらは碾茶(てんちゃ)といい、飲んでびっくりの甘いお茶です。
碾茶自体はなかなか入手しにくいものですが、碾茶を粉状にしたものは皆さんおなじみの抹茶です。
ちなみに、健康食品のように売られている「甜茶」もてんちゃと読みますが、甜茶中国茶のひとつであり、碾茶とは違うものです。


碾茶の名前は、「碾(てん)」と呼ばれる木製の薬研(やげん)で茶葉を挽くことに由来しています。
薬研とは、漢方薬などを粉砕するのに使う器具で、本来は石製のものです。


碾茶玉露とかぶせ茶と共通点があります。それは、栽培方法です。

お茶の栽培というと、傾斜のある段々畑の風景を思い描くかもしれませんが、碾茶玉露、かぶせ茶は覆いのある茶園で栽培されます。この栽培方法を被覆栽培と言います。

被覆栽培は、霜の防止と品質向上を目的とした栽培方法です。栽培管理に手間がかかり、設備投資も大きいため、産地は限られています。現在の主な産地は、福岡県八女市周辺や京都宇治市周辺などです。


被覆栽培で用いる覆いは、伝統的には葦簾(よしず)、最近は化学繊維素材のネットを使います。
覆いをかける期間は作るお茶によって異なり、かぶせ茶は一週間程度、玉露は20日前後、碾茶は30日前後です。


被覆栽培のお茶の特徴は、うま味と甘味が強いことです。
お茶のうま味と甘味は主にテアニンというアミノ酸によって作りだされます。
茶葉中のテアニンは光の影響により苦味成分であるカテキンに変化しますが、被覆栽培では光が遮られるため、この変化が抑えられ、テアニンが多く渋味が少なくなります。

ところで、玉露はぬるめのお湯で淹れるといいということは聞いたことがあると思います。これはテアニンやカテキンの化学的性質が理由となっています。
テアニンはアミノ酸の中でも最も水に溶出しやすいのに対して、カテキンは80℃以上でないと溶出しません。従って、テアニン量の多い玉露はぬるめのお湯で淹れることにより、うま味や甘味という良さを引き出すことができるのです。


今回は、こちらの玉露をいただきます。



茶葉は濃い緑色です。
被覆栽培で作られるお茶は少ない光を効率的に吸収しようとするために、葉緑素であるクロロフィルを大量に生成し、このような濃い色になります。記事の最初に載せた碾茶の写真をもう一度見てみてください。同じように濃い色をしていますね。

ぬるめのお湯の中へ、じっくりとうま味と甘味が溶け出していきます。。



水色は黄金色。甘くてうま味がたっぷりです。どことなく抹茶を飲んだ後味と似ています。
「やはりお茶は渋味も欲しい!」という方は、かぶせ茶がおすすめです。