妊婦さんはリステリア菌による食中毒に注意

あらゆる食品にはリスクがあり、全ての人は食品による疾患にかかる可能性があります。しかし、より疾患にかかりやすい状態にあるグループがあります。そのひとつが妊婦さんです。

妊娠中はお酒や煙草を避けた方がよいというのは広く知られていることだと思いますが、その他重要なもののひとつに食中毒があります。

今回は、妊婦さんが特に気をつけるべき食中毒菌であるリステリア菌について書きたいと思います。リステリア菌は病気にかかっている人や乳幼児、高齢者も要注意の細菌です。妊婦さんはもちろん、そうでない方もどうぞお付き合いください!


世界保健関(WHO)は、妊娠によるホルモンの変化は、母体の免疫機能を低下させ、食品による疾患にかかりやすい状態にする可能性があり、また、胎児は食品による病原体の影響を受けやすいとしています。


リステリア菌は、自然(土壌や河川など)に広く分布している細菌で、ほ乳類の他に鳥類や魚類など様々な種類の生物に感染します。

リステリア菌は、多くの細菌にとっては増殖ができない条件である0℃という低温や高い塩分濃度(10%)でも増殖が可能で、酸に強いという特徴があります。
そのため、感染した食品が長期冷蔵保存されている間に、リステリア菌はさらに増殖してしまうこともあるのです。言い換えると、長期の冷蔵保存が可能である食品は、リステリア菌による食中毒を引き起こす可能性も高くなります。過去にリステリア菌による食中毒が報告された食品に、ナチュラルチーズ(*)やスモークサーモン、生ハムなどがあります。(*熟成後に加熱処理を行わないチーズ)


リステリア菌による食中毒にかかると、発熱や頭痛といったインフルエンザのような症状がでて、重症になると脊髄膜炎や敗血症などになり、この場合の致死率は20〜30%と非常に高いものです。また、流産や早産などの原因になる可能性があるとされています。

欧米では多数のリステリア菌の集団感染が報告されていますが、最近では2008年にカナダで加工肉食品が原因で56人(20人が死亡)が感染したという事例があります。
日本国内では2001年に北海道で起きた食中毒の原因がナチュラルチーズであったと特定されたのが集団感染の唯一の事例です(38名がインフルエンザのような症状になる)。ただし、食品の汚染実態としては欧米と日本での差はないようです。


健康な人は少量のリステリア菌に感染しても発症はしないとされています。しかし、妊婦さんや乳幼児、高齢者を含む免疫機能が低い人は、少量であっても食中毒につながる可能性があります。

厚生労働省は、特に妊婦さんへの情報提供を行っており、その中で「冷蔵保存しているから大丈夫」と冷蔵庫を過信せず、食べる前には十分加熱をすることや、ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテを避けることを呼びかけています。


リステリア菌はその他の多くの食中毒の原因菌と同様に、加熱で死滅するのです。
チーズは加熱殺菌したものを購入する、加熱調理したものでも時間が経っていれば再加熱をする、加熱調理できない食品や消費期限・賞味期限を過ぎた食品は避けることで、リステリア菌による食中毒を予防することができます。

こうしたポイントを押さえたらあとは神経質になりすぎず、楽しい食生活を送りたいものですね。