塩の表示の自主ルール、「天然塩」は禁止

2010年4月21日に、食用塩公正取引協議会が定めた、優良誤認を防ぐための塩の表示ルールが始まり、天然塩や自然塩などの表示が禁止となりました。


食用塩公正取引協議会とは、塩の製造業者などが会員になっている業界団体です。なので、今回の表示ルールは世間で販売されている全ての塩に適用されるものではなく、団体に所属している会員が中心になる自主ルールです。
この自主ルールでは、これまでのJAS法と食品衛生法で定められた名称や原材料名などの項目の他に、原産地と製法を表示する必要があります。
また、優良誤認を防ぐためにいくつかの表示が禁止されます。

【自主ルールで禁止される言葉】
・天然塩、自然塩
・ミネラル豊富、ミネラルたっぷり
・健康・美容によいことをイメージさせる言葉
・古代塩、太古塩

このほか、「○○の塩」というように地名を冠した製品もありますが、これについては原産地から最終加工地までが同一の場合はOK、そうではない場合で最終加工地を製品名に付けるときはカッコ書きで原産地を記入することが必要です(例えば、「白浜の塩(原料はメキシコ産)」)。


以上の自主ルールに従った塩は、公正マークが付けられます(図1)。



図1.塩の公正マーク(食用塩公正取引委員会パンフレットより)


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天然塩や自然塩と書いてある製品は結構よく見かける気がしますが、実はこうした言葉は必ずしも製法などに基づいていないこともあり、明確な定義がないので、自主ルールでは禁止となるのです。


では、塩の製法とは?
海水を煮つめて・・と思われるかもしれませんが、海水の塩分濃度は3%程度。みんなが使えるほどの量の塩をこの方法でつくることは難しいでしょう。そこで、基本的には海水の塩分をあらかじめ濃くしてから(採かん)、煮詰める(せんごう)という方法で塩をつくっています。

各工程でいくつか製法があり、次の用語が使われます。
(1)採かん工程:天日、イオン膜、逆浸透膜、平釜、溶解、浸漬
(2)せんごう工程:天日、平釜、立釜、噴霧乾燥、加熱ドラム
(3)品質を整える工程:乾燥、焼成、粉砕、洗浄、混合、造粒
(4)その他:採掘


この中で、用いた製法を表示に書き出します(図2)。



図2.製法表示の例(食用塩公正取引委員会パンフレットより)


製法の用語についていくつか簡単にご紹介すると・・

●「イオン膜」は、イオン膜に電流を流して、海水からナトリウムイオンと塩素イオンを透過させて海水を濃縮する製法です(塩は海水中でナトリウムイオンと塩素イオンになっています)。海水の塩分は約3%ですが約18%まで濃くできます。日本で開発された技術で、現在塩づくりでよく用いられています。

「天日」は、太陽光や風力といった自然エネルギーを活用して塩を作る製法ですが、日本ではほとんど行われていません。行われていてもごく小規模です。海外から輸入した天日塩を「溶解」して塩につくり直すこともあります。

●「平釜」は、上が開放された釜などに海水を入れ煮詰めて塩を結晶化する製法で、小規模生産で用いられます(「昔ながらの製法」と枕詞がつくことも)。一方で、大規模生産では密閉された「立釜」が使われます。

その他の各用語の詳細は食用塩公正取引委員会HPに掲載されています。


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塩から他の食品にも目を向けてみると・・
「天然塩」や「自然塩」は今回のルールでは禁止となりましたが、他にも天然・自然とつく食品はいくつかあります。
それらが何らかの定義のもとに天然・自然とついているのか、それともネーミングだけのものなのか・・実はよく分からない人も多いのではないでしょうか。

例えば、天然水や天然酵母は?また後日、ご紹介したいと思います。