ヨウ素、不足の国もあるが日本人は摂り過ぎに注意

先日葉酸についての記事を書きました。

葉酸は日本だけではなく、海外でも妊婦の摂取不足が問題となっており、オーストラリアなどではパン用の小麦への添加が義務となっています。
栄養素の中には、住んでいる地域の環境や食生活によって摂取量が大きく異なるものがあります。
ヨウ素(ヨードとも呼ばれる)がそのひとつです。ヨウ素は海水中にあり、昆布を始めとした海藻類や魚介類に多く含まれます。


ヨウ素は、生殖や成長、発達といった生理的なプロセスを制御する甲状腺ホルモンを作ります。ヨウ素は特に赤ちゃんの脳や神経系の発達に必須のものであり、胎児期や乳幼児期のヨウ素不足は、発育を遅らせると言われています。


一日に摂取したヨウ素は体内において約一ヵ月で半分の量になるので、定期的に食品から摂取する必要があります。
その一日の必要量はごく微量で、2010年が5年に一度の改定のタイミングである「日本人の食事摂取基準(2010年版)」において、日本人のヨウ素の推奨量は130μg/日となっています(1mg=1000μg)

しかし、日本人のヨウ素の摂取量は平均値として約1.5mg/日と推定されており、日本人はもう既に十分な量のヨウ素を摂取しているということが分かります。

一方で、海外ではヨウ素不足が問題となっている地域も多くあります。
例えば、他の国と比べて、国民のヨウ素摂取量がはるかに少ないことが分かったオーストラリアでは、2009年10月からパン用の塩にヨウ素を添加するという対策が始まっています。オーストラリアの土壌には元々ヨウ素が少ないため、その土地で生産される食品ばかりを食べていることが国民のヨウ素不足につながったようです。


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では次に、私たち日本人にはヨウ素の過剰摂取の影響はないのでしょうか?

一般的に日本人は、伝統的にヨウ素を多く摂取してきているため、ヨウ素の過剰摂取の影響を受けにくい民族であると考えられています。

しかし、海藻などを多量に摂取することによるヨウ素過剰症の報告はあります。ヨウ素の過剰摂取は、軽度の場合は甲状腺機能低下(橋本病など)、重度の場合は甲状腺腫などを引き起こすことがあります。

このため、前述の食事摂取基準においては、日本人の食生活の現状に合わせて、ヨウ素の耐容上限量を設定しており、成人男女においては2.2mg/日となっています。なお、この値は「連続的なヨウ素摂取に適用される」ということで、これにプラスして、たまに多めに(5mg/日程度)摂取することについては問題ないようです。

ただし、妊婦や授乳婦については、許容上限量は通常の成人男女と同じ値(2.2mg/日)ですが、赤ちゃんは過剰摂取による影響を受けやすいので、一度に多量の摂取をするということは避けた方がいいようです。

独立行政法人国立健康・栄養研究所HP中に、各食品100g当たりのヨウ素含有量が掲載されていましたので、含有量が多いものをいくつか転記します。

・昆布 131000μg
・わかめ 7790μg
・あまのり 6100μg
・いわし 268μg
・さば 248μg
かつお 198μg
・バター 62μg

100g当たりにすると、昆布が圧倒的に多いですね。ちなみに、昆布でだしをとる場合、水1Lにつき昆布を10g程度使います。この量では大体5人分くらいのだしができます。