ヒジキは水戻ししよう

ヒジキはどのようにして食べるのが好きですか?
煮つけるのが定番ですが、白和えやサラダにしてもおいしいですね。ヒジキは乾燥させた状態で保存できるので、「もう一品何かほしい」というときに活用する方は多いのではないでしょうか。


ヒジキを調理するときには、下ごしらえとして水戻しします。最近は水戻しせずに調理をしてしまうことがあるようですが、水戻しは大切な手順なのでぜひとも行ってください。
なぜなら、ヒジキを水戻しすることで、ヒジキにもともと含まれる無機ヒ素が除去できるからです。


【食品中のヒ素
ヒ素というといかにも健康に悪そうな印象があるかもしれませんが、この物質自体は海水中に微量含まれています。
そして、ワカメやコンブのような褐藻、そして魚には多量のヒ素が含まれています。「多量に含まれて」はいますが、これらに含まれるヒ素は毒性がほとんどない有機ヒ素です。

それに対して、有機化されていない無機ヒ素には急性毒性や発がん性などの慢性毒性があると言われています。そして、ヒジキには無機ヒ素が多く含まれていることが分かっており、英国食品基準庁(FSA)などは国民に向けてヒジキの摂取をひかえるように勧告しています。(イギリスではヒジキは珍しい食品だけれど、健康によいイメージがあるそう。)

WHOが定めた無機ヒ素のPTWI(暫定的耐容週間摂取量)は15μg/kg /週です。これは、一週間のうちに体重1kgあたり15μgなら一生涯に渡って摂取し続けても問題がないということです。体重50kgの人では、750μg/週(=0.75mg/週)となります。


【ヒジキは食べても大丈夫?】
ヒジキの無機ヒ素含有量とPTWIの値を比べてみます。
東京都福祉保健局によると、江東区保健所がスーパーで売られている乾燥ヒジキを10種類調べたところ、それらには1kgあたり平均82.5mgの総ヒ素、平均63.1mgの無機ヒ素が含まれていました。

みなさんは一回にどのくらいの量のヒジキを食べますか?今回は、小鉢にこんもりと盛れる量を想定して、一食分を乾燥ヒジキ5gとしてみます。
江東区保険所の調査結果に当てはめると、乾燥ヒジキ5g中には平均0.32 mgの無機ヒ素が含まれています。先ほど挙げたPTWIの値(体重50kgの人で0.75mg/週)と比べると、一食分でも結構多くの無機ヒ素を摂ってしまうんだな・・と思ってしまうかもしれません。

しかし、実際には乾燥ヒジキは水戻しをしてから調理します。
同保健所によると、芽ヒジキについては、水戻し30分後に総ヒ素の36%、60分後に68%が水に溶けだしたとのことです。長ヒジキもほぼ同様の値でした。ヒジキに含まれる総ヒ素のうち無機ヒ素は7〜8割なので、水戻しは無機ヒ素を除去するのに有効な方法であると思われます。

この結果を踏まえ、東京都福祉保健局は、乾燥ヒジキのおすすめの調理法を次のように提案しています。
●乾燥ヒジキはたっぷりの水で30分以上水戻ししてから調理する
●水戻しに使った水は調理に使わない
●水戻ししたあとは数回洗いよく水気を絞る
●茹でる前にも水戻しをする

このような調理法を行い、週に3回以上(一回あたり乾燥ヒジキを5g、体重50kgの人の場合)食べなければ、PTWIの値を超えることはないとしています。

ただし、たとえ一時期にPTWIの値をある程度超える量のヒジキを食べたとしても、それだけで悪影響がでるということはないでしょう。

このようにいう理由は三つあります。

一つ目は、PTWIは「一生涯に渡って摂取し続けても問題のない量」であり、一時期この値をいくらか超える量を摂取したとしても、それがただちに問題になることはないからです。

二つ目は、ヒジキ中の無機ヒ素の全てが体内に吸収するわけではないからです。
無機ヒ素のPTWIは、もともとは飲料水に対して定められたもので、ほぼ100%が吸収されることを条件としています。それに対して、食品から摂取する場合、食品に含まれる無機ヒ素の(それ以外の成分も)100%が吸収されるということはないのです。

三つ目は、ヒジキによるヒ素中毒の報告がないからです。
日本人は長い間、ヒジキをおかずの一品として食べてきました。
ヒジキがよく採れる海の近くでは、毎日のように食べているという話も聞きます。それでも、食品安全委員会によると、これまでにヒジキを食べてヒ素中毒を起こすなど健康に悪影響が生じたという報告はありません。


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ヒジキはミネラルを豊富に含む食材ですので、水戻しをしっかり行う、毎日ヒジキばかり食べ過ぎない、ということのほかは気にしすぎず、これまで通り活用していくといいでしょう。