Q&A「冷凍野菜は製品にした後の農薬使用がないので安全?」

先日いただいたご質問です。

☆バナナや柑橘類は残留農薬が気になるが、冷凍野菜は製品にした後の農薬使用がないのでまだ安全か?冷凍野菜でもしっかり洗ったりすべきか?


野菜に残留している農薬は、洗浄や加熱をすることで減少します。減少率は野菜や農薬の種類、洗浄や加熱の方法などにより異なります。例えば、果菜類に用いられるイプロジオン(殺菌剤の一種)は水で洗うことで77%が、煮ることで15%が除去されます。
冷凍野菜を製造する際には洗浄や加熱を行うので、生の状態に比べると残留農薬は少なくなっているでしょう。


ただし、だからといって冷凍もの以外の野菜や果物が安全ではないのかというと、そうではありません。

現在、たくさんの種類の農薬がありますが、それぞれ各作物について残留基準値が設定されています。
残留基準値は、動物を用いた毒性試験によって設定されます。各種の動物試験(急性毒性、慢性毒性、発がん性、繁殖毒性など)を行った結果、いずれの試験においても毒性が確認されなかった量を無毒性量(NOAEL)とします。これに安全係数の1/100を掛けた値を一日摂取許容量(ADI)とします。ADIとは、「人間が生涯に渡って毎日摂取しても健康に影響を及ぼさないであろう」量です。そして、一日に摂取する残留農薬の量がADIの8割以下になるように、各作物について残留基準値が設定されます。
残留基準値は農薬の使用基準(使用作物、使用量、使用時期など)を守ることで達成されます。従って、故意に大きく使用基準から外れるといったことがない限り、農薬を使用した作物を一生涯食べていても健康に悪い影響が出てくることはないと考えられます。
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こうした残留基準値は輸入ものの作物についても適用されています。
基準値が守られているかどうかは港や空港の検疫所で監視されています。届出のあった輸入品は全て書類審査され、必要と判断されたものについては分析が行われます。平成22年度の監視の統計によると、残留農薬の違反率は届出件数の約0.014%だったとのことです(届出:約200万件、違反:1,376件、残留農薬の違反:272件)。違反があったものについては積み戻されるか廃棄処分されるなどして、国内で流通することはありません。


ちなみに、バナナや多くの柑橘類(オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライムなど)の残留基準値は「果実全体」に適用されます。つまり、皮をむかない状態で基準値以下であることが求められているのです。(柑橘類の皮はジャムなどにして食べることがありますものね。バナナの皮は普通食べませんが。)
輸入もののバナナや柑橘類については、長期間の輸送時にかびが生えてしまうことを防ぐため、収穫後に防かび剤を使用することがあります。防かび剤は収穫後に使うため、日本においては農薬ではなく添加物に分類されています。添加物についても農薬と同様に、ADIをもとにした厳しい使用基準が定められており、安全性に関する規制がされています。